「2024年問題」対策で荷待ち・荷役時間短縮図る改正2法が可決、成立★続報

「2024年問題」対策で荷待ち・荷役時間短縮図る改正2法が可決、成立★続報

下請け取引透明化も、ドライバーの待遇改善目指す

「2024年問題」対策のため、荷主企業や物流事業者に物流拠点での荷待ち・荷役時間短縮を図る業務効率化の計画を策定するよう努力義務を科すことや、元請けの物流事業者に対し下請け事業者との取引を透明化するよう求めることなどを盛り込んだ改正物流総合効率化法(物効法)と改正貨物自動車運送事業法が4月26日の参議院本会議で、与党などの賛成多数で可決、成立した。

併せて、トラック運送事業者が荷主や元請け事業者と運賃交渉する際の参考となる「標準的運賃」を毎年見直すことなどを求める付帯決議も採択した。交付から2年以内に施行する。

物効法は施行後、名称を「物資流通効率化法」に変更する。政府は改正2法施行から3年で、2019年度の実績より荷待ち・荷役時間を平均で年間125時間/人削減することや、積載率向上による輸送能力を16%増やすことを目標に設定している。

改正2法はトラックドライバーの負荷軽減と待遇改善につなげるとともに、物流業界全体で輸送能力を増加させ、“物が運べなくなる”最悪の事態を回避するのが狙い。多重下請け構造を背景とした運賃の値下げなどの不公平な取引関係の是正も狙う。早ければ2025年度中にも施行の見通し。今後、荷主と物流事業者が一層連携し、業務効率化とドライバーの待遇改善を図ることがさらに強く求められる。

「物流統括管理者」配置必須に

成立した2法のうち、改正物効法は荷主企業や物流事業者に対し、物流業務の効率化に向け荷待ちや荷役の時間短縮とトラックの積載率向上に取り組むよう努力義務を設けた上で、政府が設ける判断基準に従って指導・助言できるようにする。

加えて、荷物の取扱量が一定規模以上の荷主や物流事業者を「特定事業者」に指定し、荷待ち・荷役時間の短縮や積載率向上のための具体策を列挙した中長期的な計画を策定、監督官庁へ提出するとともに、定期的に進捗状況などを報告するよう義務付ける。物流業界に影響力のある企業が率先して物流効率化に取り組む環境を作り出し、業界全体へ波及させていきたいとの政府の思惑がある。

併せて、特定事業者の荷主には、計画を進める上で中心となり企業全体を率いる「物流統括管理者」を選任するよう定める。欧米で普及が進んでいる、権限を持って各部門間の意見調整を図るCLO(最高ロジスティクス責任者)の配置を荷主企業で促進する狙いがある。

政府は事業者の取り組みが計画より遅れている場合などに是正するよう勧告し、従わない場合は社名を公表したり、より強く是正を命令したりできるようにする。勧告や命令を出すのに際しては、政府が事業者に立ち入り検査することが可能と設定する。

事業者が是正命令に違反したり、物流統括管理者を置かなかったりした場合、最大で罰金100万円を科せるようにする。中長期的な計画を提出しなかったり、定期的な報告を怠ったり、立ち入り検査に協力しなかったりした場合も最大50万円の罰金を科すことが可能となる。

「実運送体制管理簿」の作成を義務化

改正貨物自動車運送事業法は、元請けの物流事業者に対し、具体的にどのような下請けの事業者に業務を発注しているかや、どのような内容で業務を発注したかを記録する「実運送体制管理簿」の作成を義務化。

加えて、荷主や運送事業者、利用運送事業者に対し、運送の契約を結ぶ際、事前に運送のサービス内容や運賃を記した書面を交わすことを義務化。その場合、積み降ろしなどの荷役の料金や燃料サーチャージの金額を盛り込むことも定める。

また、トラック運送事業者や利用運送事業者には、下請けに仕事を発注する内容を適正化するよう努力義務を明記し、一定以上の規模を持つ事業者は適正化に関する管理規定の作成と管理を担う責任者の選任を義務化する。

不利な状況に置かれがちな下請けの事業者を保護し、運賃などの交渉を通じてドライバーの賃上げに不可欠な原資を確保できるよう後押しする。

並行して、軽貨物車両の輸送事業者には、安全に関する知識を有する管理者を営業所ごとに選任し、講習を定期的に受けることや、一定規模以上の深刻な事故を起こした場合、国土交通相へ報告することなども定めている。国交省が軽貨物車両の輸送事業者に関連した事故の報告や安全確保命令に関する情報を公開することも設定している。

(藤原秀行)

政策カテゴリの最新記事