「現地現物」重視し課題把握、観光立国や地方創生に貢献も
空港で航空機の誘導や貨物の積み降ろし、旅客の搭乗支援といったグランドハンドリング(地上支援業務、グラハン)業務を手掛けている事業者の業界団体「空港グランドハンドリング協会」の服部茂新会長(ANAエアポートサービス会長)は5月16日、東京・羽田空港内で就任に際して記者会見した。
服部会長は「業界の発展のため、ひいては航空産業の発展のため、さらには日本の経済のため、訪日(観光客)を中心とした観光立国の出現に向け、地方創生にも貢献すべく、業界を挙げて取り組んでいきたい。会員各社が実感できる何らかの成果を1つ1つ実現できるよう運営を進めていきたい」と決意を語った。
また、地方空港がグラハン人材の不足などの課題を抱えていることへの対応について「(現場を重視する)現地現物で、具体的にどのような課題があるか、空港単位でつぶさに把握して業界団体ならではのソリューション、活動をしていくことが必要だと思っている」と強調した。
会見する服部新会長
服部会長は、新型コロナウイルス感染拡大前と比較して、会員各社の従業員数が96%程度まで回復していることなどに触れた上で「コロナの間採用を止めていたが、コロナからの回復で急きょ採用を始めているところもある。採用は順調に進んでいるが、残念ながら離職も続いている。採用数に対して65%程度の離職が発生している」と説明。引き続き、積極的な採用活動に加えて離職の抑制が重要な課題との認識を示した。
高い離職率が続いている背景として「新人の比率がかなり増えてきて、教育訓練の需要が高まる中で一生懸頑張ってくれている中堅層にかなり負担がかかっているのではないかと懸念している」と分析。中堅層に的を絞った業務負荷軽減などの対応を進めることがポイントになると指摘した。
昨年8月の協会発足から重要な課題として位置付けてきているカスタマーハラスメント(カスハラ)対策について、どういう行為がカスハラに該当するかを明示したガイドラインを策定する考えをあらためて表明。「(カスハラに対応する)職場環境を若い人にも明示、共有して離職を防いでいきたい」と語った。
発足当初から会長を務めてきた小山田亜希子氏に対しては「業界団体がない中で立ち上げ、第1期の会長を務められた。業界内ではコンペティターとの立ち位置でのお付き合いしかなかった中で、共通の課題をまとめて問題意識については結集していけるとの信念の下、業界団体を立ち上げた。(公正な取引など)確実に守らなければならないことは守りつつ、しっかりと共通の課題について取り組んできた。かなり難しい部分はあったと思うがしっかりと切り盛りしてやってくれた」と謝意を表明。
「委託受託の関係があり、会員各社の立ち位置が非常に難しい部分がある。私の(グラハン業界の)長い経験の中で会員各社の複雑な立場も理解しながら協会を運営していきたい」と話した。
会見に同席した同協会の曽原倫太郎執行理事(ANAオペレーションサポートセンター空港サポート室グランドハンドリング企画部長)は「航空のサプライチェーン全体に関わるそれぞれ業界が持続しない限り、航空産業全体が飛行機を飛ばせない状況になり、どの業界も潤わなくなる。全体として共存共栄ができる方向は、業界全体の生産性向上も必要だし、適正な取引価格をすることも重要。両方を求めていく必要がある」と語った。
会見に臨む服部会長(右)と曽原執行理事
(藤原秀行)