【現地取材・動画】羽田空港の制限区域内で初、航空貨物牽引トラクターが完全自動運転

【現地取材・動画】羽田空港の制限区域内で初、航空貨物牽引トラクターが完全自動運転

ANAと豊田自動織機が実証実験公開、25年中の実用化目指す

全日本空輸(ANA)と豊田自動織機は7月16日、東京の羽田空港内で、貨物コンテナを牽引して航空機まで自動で運ぶトーイングトラクターの実証実験をメディアに公開した。

実験は7月1~19日、特定の条件下でドライバーが同乗せず、完全に自動化する「レベル4」運転を国内で初めて、羽田空港の制限区域(保安検査を通過した旅客や航空会社従業員ら限られた人しか立ち入りできないエリア)内で実施。安全確保の上での課題などを探る。

グランドハンドリング(地上支援)業務の人手不足が深刻化し、トーイングトラクターの運転も人繰りに苦労しているため、自動運転を実現し、グランドハンドリングの業務効率化・省力化を図る。両社は2025年中にトーイングトラクターの自動運転実用化したい考えだ。他の空港への展開も視野に入れている。


実験に投入している自動運転トーイングトラクター

両社は2017年、トーイングトラクターの自動運転技術開発に着手。2019年以降、九州の佐賀空港、中部国際空港、羽田空港で実際に搭乗者の手荷物や貨物を搭載したコンテナを、自動運転トーイングトラクターに載せて運んできた。

豊田自動織機製の電動トーイングトラクターを基に、周辺の障害物を検知する高性能のセンサー「LiDAR(ライダー)」や遠隔監視用のカメラなどを搭載、同社が独自に開発した車両運行管理システム「Fleet Management System(FMS)」も使い、離れた場所から管理者が周辺の状況をリアルタイムでチェックし、危険を察知すれば自動運転トーイングトラクターをすぐに停止させることができる。速度は最大で時速15km。

実験はトーイングトラクターが羽田空港の東貨物地区の上屋と第2ターミナルの63~65番スポット(駐機する位置)の間約2kmを、貨物コンテナを牽引して自動運転。10分程度で輸送することができる。周辺に人間や他の車両などを検知するとストップする。


各種センサーやカメラを複数取り付けている


無人のままコンテナを牽引している

実験公開に併せて羽田空港内で取材に応じたANAオペレーションサポートセンター空港サポート室グランドハンドリング企画部の森真希子氏は「グランドハンドリングは慢性的な人手不足が課題になっている。より少ない労力で空港のオペレーションができるという姿を目指していきたい」と説明。

豊田自動織機トヨタL&FカンパニーAR開発部の深津史浩氏は「25年に向け、ANAさんと(自動運転の性能を)突き詰めて人手不足解消に貢献していきたい」と語った。


取材に応じるANA・森氏と豊田自動織機・深津氏

(藤原秀行)

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