新千歳や北九州との間で特産品など空輸、航空貨物需要の開拓図る
ヤマトホールディングス(HD)と日本航空(JAL)、同社と中国の春秋航空が共同出資しているLCC(格安航空会社)のスプリング・ジャパンの3社は8月1日、運航しているヤマトグループ向け貨物専用機(フレイター)が、新たに同日、羽田空港に就航したと発表した。
フレイターは今年4月に運航を始め、これまでは成田と新千歳、北九州、那覇の国内4空港間で1日当たり9便を飛ばしてきた。8月1日以降は羽田が加わり、新たに羽田~新千歳、羽田~北九州の間で運航をスタート、全体で1日13便に拡充した。現在は3機体制で、3社は将来、1日の運航を21便まで増やしていきたい考え。
3社は8月1日未明、羽田空港で、新千歳と北九州の両空港からそれぞれ到着したフレイター1号機をメディアに公開した。フレイターは欧州のエアバスA321-200 P2F型機を貨物専用機に改修しており、ヤマトがリースしている。機体と尾翼に遠くからでも目立つヤマトのマークが大きく描かれた“クロネコジェット”だ。宅配などの荷物を搭載した2機が相次ぎ滑走路に着陸した。
羽田空港に到着した新千歳空港からのフレイター第1便
手前が新千歳から、奥が北九州からそれぞれ到着したフレイター第1便。機体と尾翼のクロネコマークが目を引く
ヤマトは「2024年問題」を考慮し、最大搭載重量が28tで同社の10tトラック5~6台分に相当するフレイターを有効活用して長距離輸送を効率化・迅速化、ドライバーの負荷を減らして輸送網の持続可能性を高めることを目指している。JALは航空機の整備などを手掛け、スプリング・ジャパンが実際の運航を担当する。
羽田発着のフレイターは国内で唯一、羽田空港を発着する貨物定期便となり、旅客機が飛んでいない深夜帯を活用、1日に2便(往復)飛行する。3社は北海道や九州・沖縄で収穫した農作物や水産品を、鮮度を保ったままスピーディーに大消費地の首都圏へ運ぶことなどを想定しており、新たな航空輸送需要を掘り起こしていきたい考えだ。
併せて、JALの国際線ネットワークとも連携させ、国内企業の輸出拡大も後押ししていくことを目指す。
到着後、すぐにコンテナの荷降ろし作業が始まった
第1便で運ばれた「クール宅急便」の荷物
ヤマト運輸の羽田空港内上屋での荷降ろし作業
羽田空港内で同日、記者会見したヤマト運輸の阿部珠樹常務執行役員は「今までは各地から首都圏へ、という形だったが、逆に首都圏からの工業品やEC関連荷物を地方に送る需要もあり、地方間のハブとしての利用も望める。フレイターで時間と距離を縮められるという武器を使いながら、ビジネスの利用をさらに活性化できるよう励んでいきたい」と語った。
JALの木藤祐一郎執行役員は「夜に北海道や九州で集荷した貨物が、首都圏であれば翌朝早くに到着する輸送サービスを提供できる。九州~北海道という日本列島の端から端までを結ぶネットワークが完成する。JALグループの国際線ネットワークもご活用いただきながら、さまざまなサービスを提供できると思っている。地域の優れた産品の販路拡大、輸出拡大、地域創生、さらには国内物流における2024年問題解決のお手伝いもできれば大変光栄なことだと思っている」と述べた。
スプリング・ジャパンの上谷宏取締役は「この事業に対する全社員のモチベーションは非常に高く、ヤマトの皆様に感謝申し上げたい。羽田への乗り入れは非常に意義があり、大切な空港。羽田を拠点として、今後は北九州と新千歳で主に夜間帯にさらに多くの荷物を運び、地元の方々やお客様に喜んでいただくよう努力してまいる所存だ。サービスに磨きを掛けていきたい」と意気込みを示した。
会見後の撮影に応じる(左から)JAL・木藤氏、ヤマト運輸・阿部氏、スプリング・ジャパン・上谷氏
(藤原秀行)