運航最適化・分散化目指す
横浜市は8月19日、デジタル技術を活用して船舶の航行を最適化し、温室効果ガス排出量削減を目指す国際的活動「Blue Visby Consortium」(ブルー・ヴィスビー・コンソーシアム)に、日本の港湾として初めて参画したと発表した。
同コンソーシアムは、船舶設計と安全・効率運航に関わるデータソリューションを提供するフィンランドのNAPA(ナパ)と英国のロンドンに本拠を置く国際弁護士事務所Stephenson Harwood(ステファンソン・ハーウッド)を中心に、30を超える団体で構成。日本からは一般財団法人日本海事協会、丸紅、商船三井、日本政策投資銀行が名を連ねている。
海運業は速く航行して目的地近辺で待機する「Sail Fast, then Wait」が慣習となっているため、結果的により多くの温室効果ガスを出してしまっているのが課題となっている。
同コンソーシアムの分析、実証研究によると、同コンソーシアムが構築するシステム「Blue Visby Solution」(ブルー・ヴィズビー・ソリューション)を用いて、船舶が共同で航海速度と到着時間を調整した場合、15%以上の排出削減が可能という。
同コンソーシアムが同システムを用いることで、同じ目的港へ向かう船舶群の到着時間の最適化・分散化を目指す。各船舶の性能や目的港の混雑状況・天候などの条件を考慮して、到着予定順を維持したまま各船舶に最適な目標到着時刻を提供することを想定。また、各船舶の最適な航行速度を割り出し効率的な航海を行うことで、温室効果ガス排出量の削減につなげる。
横浜市は同コンソーシアムへの参画を通じ、船舶からの温室効果ガス削減を働き掛け、「カーボンニュートラルポート」を形成したい考え。
昨年10月、横浜市は船舶の排出ガスの可視化サービスを国内港湾で初めて採用。港内の全ての運航形態の船舶から出る温室効果ガスなどの推計値を正確に把握できるようになった。加えて、港内で沖待ちしている船舶が多くの温室効果ガスを排出していることも可視化できた。
日本の港湾管理者には船舶に対して最適な航行を求める権限がないが、同コンソーシアムに参画することで、官民連携を通じて船舶の最適運航を訴求していくことを念頭に置いている。
船舶からの排出ガスの可視化サービス「Maritime Emissions Portal」(RightShip提供)の画面。赤いエリアは排出ガス量が多い地域を表している
Blue Visby Solution の取り組みイメージ (Blue Visby ConsortiumのHPより引用)。同じ港を目指す船舶群の到着時間の最適化・分散化を図っている
(藤原秀行)※いずれもプレスリリースより引用