無駄な燃料消費削減、温室効果ガス抑制見込む
商船三井は9月26日、船からのビックデータを活用したプロジェクト「FOCUS(フォーカス)」の一環として、船の推進性能劣化を追跡するアプリケーション「Fouling Analysis」(ファウリング・アナリシス)をリリースしたと発表した。
船舶の水面下に付着する海洋生物による生物汚損(Fouling)の状態・原因を詳細に解析し、最適なメンテナンス(運航中の船底クリーニングや入渠時の塗装工事など)を提案する。アプリ活用で生物汚損による推進性能の劣化が引き起こす無駄な燃料消費を削減し、温室効果ガス排出抑制につなげられると見込む。
Fouling Analysisは数分間隔で収集した船のセンサーデータと、竣工後から毎日記録している航海データを活用し、独自のノウハウで汚損の状態・原因を解析する。
船齢が高い船でも、竣工から現在までの推進性能の劣化をモニタリングすることが可能という。
さらに、停船状況、船底塗料情報、植物プランクトンの濃度、3D船底表面写真およびその分析結果を照らし合わせることで、性能劣化の原因分析や船底防汚塗料の評価を可能にする。
蓄積したデータと分析結果を基に、最適なクリーニングや船の運航に合わせた最適な船底塗料の選定、質の高い塗装工事をそれぞれ実行することで推進性能の劣化を抑え、無駄な燃料消費の無い効率的な船舶運航を実現したい考え。
Fouling Analysis分析画面(イメージ)
3D船底表面写真からは汚損エリアやその面積などを算出できる。最適な塗料の選定、塗装業者の技術の評価、エリアごとの最適な塗膜、塗装仕様の最適化などに加え、推進性能劣化の解析結果の精度確認にも活用できる。
入渠時に撮影した3D船体表面写真
アプリはグループで船舶管理を手掛けるMOLシップマネージメントの知見を反映。商船三井が運航する約500隻の船舶のメンテナンス計画に生かしている。現在はAIを活用した、さらに高精度な分析モデルを開発中で、最適なメンテナンス計画の策定能力を一層進化させ、船舶管理の品質向上を通じて脱炭素を後押ししていく構えだ。
(藤原秀行)※いずれも商船三井提供