地震時一次点検の業務効率化、作業員の安全確保と設備保全の高度化後押し
KDDIとKDDIスマートドローンは11月18日、東京電力ホールディングス(HD)傘下で再生可能エネルギーによる発電を手掛ける東京電力リニューアブルパワー(東電RP) が運営している葛野川ダム (山梨県大月市) で11月14日に、米宇宙関連企業スペースXの衛星高速通信サービス「Starlink(スターリンク)」を使った通信可能エリア構築ソリューション「Satellite Mobile Link」(サテライト・モバイル・リンク)を活用し、自律飛行型ドローンによる地震発生後を想定した臨時点検の実証を行い、成功したと発表した。
「Satellite Mobile Link」で水力発電ダムの通信環境を構築した事例は、国内で初めてという。
今回の実証は、人に代わって自律飛行型ドローンがダムから半径約2km圏内の点検飛行を担い、ダムに異常がないかを、遠隔地からでもリアルタイムに把握可能なことを確認した。
地震時一次点検業務の効率化を促進することで、危険な保守・点検業務から作業員の人命を守ることに貢献できると見込む。
KDDIは今年5月、顧客の事業成長・社会課題解決を後押しするため、AI時代の新たなビジネスプラットフォーム「WAKONX (ワコンクロス)」を始動させており、その一環として老朽化するインフラ施設の保守点検業務の効率化などを図る。
実証のシステムイメージ
葛野川ダムにおける地震発生後の一次点検は、作業員が必ず現場へ出向く必要があった。管轄事務所からダムへの移動経路は、道路の陥没や落石などにより安全状況が不明で、人命に関わるリスクが非常に高いことに加え、ダムでも一定時間内に全ての点検箇所を目視確認して報告をしなければならないなど、有事の際に健全性を迅速に把握することが困難だった。
迅速な状況把握のためにドローンなどの活用が期待されていたものの、ダム外部からの通信回線の新規引込みが困難なことなど、クリアすべき多くの課題があり、通信環境の改善がなかなか進んでいなかった。
KDDIは、通信不感エリアに「Satellite Mobile Link」を設置することで、携帯電話による音声通話やデータ通信の利用、現場の作業員への遠隔支援や緊急時の連絡などに加え、ドローンやロボットを活用した遠隔でのインフラ点検やメンテナンスなどを実現できると想定している。
実証では、KDDIが葛野川ダムの水門上部に、Starlinkと4G LTE(携帯高速通信)アンテナを一体にした架台型の「Satellite Mobile Link」を設置したことにより、最小限の設備でダムの堤体から調整池上流部約2kmの範囲まで通信環境を構築、緊急通報を含めた音声電話やデータ通信を可能にした。
その結果、現場の状況を遠隔で確認することに加え、作業支援や緊急対応時の関係者との迅速な連絡もできるようになった。
水門上部に設置した「Satellite Mobile Link」
併せて、「Satellite Mobile Link」の4G LTE活用により、自律飛行型ドローンがダム堤体から半径約2km圏内の状況確認を遠隔かつ自動で行えるようにした。
自動充電ポート付ドローンから飛行するドローン (遠隔地から自律飛行の開始)
地震などによる漏水発生を想定した堤体撮影
実証にはG6.0 & NEST (自動充電ポート付ドローン) とSkydio X10 (AI搭載自律飛行ドローン) の2種類の機体を使用。前者は飛行から充電までを全て自動で行う。4G LTE通信回線によるインターネット接続を実現することにより、遠隔地から飛行実行や現地の映像をリアルタイムに確認できるほか、ドローンで撮影された映像・写真をクラウドに格納することで、ドローンを操作せずにデータを取得する。
G6.0 & NEST
Skydio X10
(藤原秀行)※いずれもプレスリリースより引用