KDDIなどが千葉・君津で実証実験、30年めどに社会実装目指す
KDDIとKDDIスマートドローン、KDDI総合研究所、自動運転技術の開発を手掛けるティアフォー、測量・土木関係のソフトウェア開発を担うアイサンテクノロジーの5社は12月6日、千葉県君津市で、自動配送ロボットと自動運転車両、ドローンの3種類のモビリティ(移動体)を組み合わせて荷物を届ける実証実験をメディアに公開した。
「物流2024年問題」やトラックドライバー不足などの課題を考慮して5社が連携し、3種類のモビリティを一体的に管理するシステムを運用することで、それぞれが最適な場所で合流し、効率的に荷物を高層ビル内に届けたり、災害時に山間部へ救援物資を配送したりできるようにすることを目指している。
5社は「1つの目的(配送)を達成するために位置情報の定義が異なる3種類のモビリティを連携させる実証に成功したのは国内初」と意義を強調している。KDDIなどは2030年をめどに3種類のモビリティを組み合わせた全自動の配送を社会実装したい考えだ。
実験に活用した自動運転車両とロボット、ドローン
追い風を活用して電力消費抑制
実証実験は君津市で廃校となった学校を活用、ドローンの操縦訓練などができる施設として2023年5月に開業した「コードベースキミツ」で実施した。自動配送ロボットはオムロン製の「LD-90」を活用し、自動運転車両はティアフォーのソフトウェア「Autoware」(オートウェア)を搭載、ドローンはプロドローン製の「PD6B-Type3」を投入した。
まず施設内で自動配送ロボットに荷物を搭載すると、管理システムが自動配送ロボットと自動運転車両の最適な連携箇所を算出。その地点で自動配送ロボットと自動運転車両が合流し、ドライバーが自動配送ロボットから荷物を自動運転車両へ積み替えた。
システムが3種類のモビリティの配送経路を一括で自動計算
自動配送ロボットに荷物を収める
敷地内を自律走行
自動運転車両と合流
自動運転車両は建物から一定の距離を走った後、ドローンにドライバーが荷物を再度積み替え、ドローンは山道奥まで飛行、決められた場所に着陸し荷物を引き渡した。実証実験では併せて、自動運転車両のけん引車からドローンが離陸したり、けん引車に着陸したりすることにもトライ、無事成功した。
自動配送ロボットと自動運転車両、ドローンはそれぞれ、位置に関する情報のデータ形式が異なっているため、そのままでは連携させることが難しい。5社のシステムは各データを変換し、3種類のモビリティの移動状況などをまとめて確認、管理できるようにしている。荷物を発送する場所と届ける場所をそれぞれ指定すれば、3種類のモビリティの最適な組み合わせや配送ルートを自動で計算する。システムを有効活用すれば、陸路が遮断された被災地へ自動運転車両とドローンで迅速に支援物資を送り込んだり、追い風を活用した飛行ルートを作成してドローンの消費電力を抑えたりといった運用が可能になると見込む。
KDDI先端技術統括本部先端技術研究本部の樫原俊太郎応用技術研究1部エキスパートは「交通空白地で高齢者の移動や買い物困難といった地域の課題解決につながることが期待できる」と語った。
自動運転車両がドローンの元へ
荷物を積んで飛び立つドローン
(藤原秀行)