25年以降の完全自動運転を事故ゼロと物流維持の鍵に
日野自動車は6月14日、東京・羽村市の羽村工場でメディア向けに「最新安全技術試乗会」を開催した。
同社は2020年代に高速道路、30年代には一般道でそれぞれ商用車による死亡事故をゼロとする経営ビジョンを掲げており、今回は最新安全装備の搭載・開発動向、事故撲滅に向けた課題認識と施策、今後の方向性などを解説。テストコースや実車を用いたデモンストレーションおよび試乗も行い、引き続き安全技術の普及促進を社会的責務と位置付けて全力で取り組んでいく姿勢を強調した。
また当日は商用車としては世界で初めてAI(人工知能)活用によるドライバー状態の自動検知装置「ドライバー異常時対応システム」(EDSS)、画像検出・解析の精度を向上させた「ドライバーモニターⅡ」を搭載した大型観光バス「日野セレガ」の改良型も公開。デモ走行では危険時に人が操作しなくても自動で車両を減速・停止させる能力が注目を集めた。同製品は7月1日に発売する。
セレガのEDSSデモ走行(車内)
セレガのEDSSデモ走行(車外)
先進技術本部の奥山宏和副領域長は商用車による死亡事故の傾向について「06年の約580件から17年には約290件と大きく減少した一方、年間でまだ300人近くの人が亡くなっている」と指摘。特に直近3年間(15~17年)は減少幅が縮まっている点を踏まえ「死者ゼロに向けて重要度の高いところから順に対策をしていくことが必要」との認識を示した。
解説する奥山宏和副領域長
日野は新車向けとして06年に「PCS」(衝突被害軽減ブレーキ)を商用車で採用したのを皮切りに、09年にドライバーモニター、11年には「VCS」(車両安定性制御システム)などの先進安全技術を世界に先駆けて採用・標準装備化。開発した技術を速やかに市場投入することで普及促進を図るとともに、車両更新まで10~15年と息の長い働きを見せる商用車の特性を踏まえ、18年より衝突防止補助システム「モービルアイ」、前方不注意警報システム「ドライバーステータスモニター」の既販車に後付けできる純正品も展開している。
これらに加え19年モデルのトラックでは前述したドライバーの健康異常や居眠りを高精度に検知する「ドライバーモニターⅡ」、一般道に多い出会い頭の衝突事故を減らすことを目的にミリ波レーダーを用いた予防安全機能「サイトアラウンドモニターシステム」、アクセルとブレーキのペダル踏み間違い事故を回避支援する「前進誤発進抑制機能」「低速衝突被害軽減機能」「クリアランスソナー」の各種装置を車型に応じて採用・改良搭載した。
デュトロの安全装置デモ
今後の開発方向性について奥山副領域長は「前方、右左折など最も事故の多いケースへの対応から、ドライバーの健康異常時や左折巻き込み、側方車衝突、路外逸脱などより死角となり得るところをカバー。その上で事故原因の9割強を占めるヒューマンエラーを低減するには自動運転技術が有効」と展望。
現在の各種安全装置による高度運転支援をベースとして、25年以降の完全自動運転と交通事故死傷者ゼロならびに輸送の効率化・維持・強化へと結び付けるロードマップを明らかにした。
(鳥羽俊一)