【現地取材・動画】計測機器メーカーの東亜DKK、オートストアの自動倉庫システムで出荷迅速化に成果

【現地取材・動画】計測機器メーカーの東亜DKK、オートストアの自動倉庫システムで出荷迅速化に成果

「物流2024年問題」対応、宅配ドライバーの待機時間解消

自動倉庫システムを手掛けるノルウェーのAutoStore(オートストア)の日本法人AutoStore System(オートストアシステム)は12月17日、水や大気などの計測機器メーカー、東亜ディーケーケー(DKK)が埼玉県狭山市の拠点でオートストアの自動倉庫システムを採用したと発表した。併せて、現地の稼働状況をメディアに公開した。

東亜DKKは「物流2024年問題」やトラックドライバー不足を考慮して受注から出荷までのリードタイム短縮を図るとともに、ピッキング作業の負荷軽減による労働環境改善も進めるため、自動倉庫システムを導入したと説明。まだ稼働開始から数カ月だが、既に出荷作業迅速化による時間外労働削減など、具体的な成果が出ていることを明らかにした。

東亜DKKは2020年7月、「ホワイト物流」推進運動に賛同し、自主行動計画を公表。物流の持続可能性を高めるため物流の改善提案を進める方針などを明示している。オートストアの自動倉庫システム採用と並行して、東北の生産拠点から首都圏への製品を長距離輸送する際、鉄道貨物へのモーダルシフトを導入するなど、さまざまな取り組みを推進している。

オートストアの自動倉庫システム設置は、政府が推し進める物流2024年問題対応の一環として、出荷までの待機時間削減につなげていく狙いがある。出荷を円滑にし、製品の販売機会損失を押さえたいとの思いも込めている。

床面掘り下げ格納スペース拡大の柔軟対応

オートストアの自動倉庫システムを取り入れたのは、今年6月に竣工した東亜DKKの新拠点「狭山インテグレーションセンター」(SIC)。地上4階建て、延床面積は約8200㎡。応用分析計の設計・製造機能を集約し、新製品の開発から量産化までのスピードアップを実現するマザー工場として運営しているほか、高機能物流施設としての機能も持たせている。現在は東北の生産拠点2カ所からSICに製品を持ち込み、SICで保管した上で全国に出荷するのが基本的な物流の流れとなっている。


SICの外観


地中熱を活用した最新の空調システムなど先進技術を取り入れている

高機能物流施設の運営上、中核の位置を占めているのがオートストアの自動倉庫システムだ。同システムは格子状に組み上げたグリッド(商品保管用の棚)内にビン(専用コンテナ)を隙間なく格納し、ロボットがグリッド上を四方に走行してピッキング対象の商品を納めたビンを回収。作業者が待つポート(作業ステーション)まで搬送する。作業者はポート前で待機していれば、届いたビンから当該の商品を取り出すことでピッキングが完了する。

SICでは、計測機器などの製品約700品目と交換部品など消耗品約6000品目のうち、4000品目超をオートストアの自動倉庫システムに格納。8台のロボットが日々の入出荷作業を担っており、ピッキングのポートは4カ所設置している。基本的にオートストアの自動倉庫システムで保管することを優先しているが、大型で自動倉庫システムのビンに収まらない製品群などは平置き棚で保管、スタッフがピッキングしている。


自動倉庫システム内でロボットが稼働し、ピッキング対象の製品を収めたビンを取り出す


消耗品などをビンに格納している


ピッキングのポート。庫内を歩き回る必要がなくなり、負荷を大幅に軽減した


平置き棚の保管エリア

オートストアの自動倉庫システムが稼働したのは今秋からだが、東亜DKKの齋藤利男執行役員生産管理部長は「ピッキングや入庫の時間が早くなることで、宅配のドライバーさんに荷物を引き渡す時間が格段に速くなり、それに伴って当社従業員の時間外労働もなくなった」と語る。

1日当たり400~500ケース程度を出荷しているが、これまでは午後6時を過ぎるまで出荷作業をすることが恒常化していたのに対し、オートストアの自動倉庫システム稼働後は午後4時ごろには出荷商品の整理が完了し、午後5時15分の出荷定時で引き渡せているという。

東亜DKKの中島信寿常務取締役埼玉事業所長兼生産本部長は、SICと同じ場所に建っていた旧倉庫では、多種の部品類などを在庫していたため従業員がピッキング作業の際、長距離を歩くことを強いられていたと回顧。

「多品種少量生産という当社に合った物流の姿はどこにあるのかを考える中で、まず物流で働かれる方々の労働環境改善と、トラック輸送がだんだん難しくなる中で物流の作業時間短縮をしなければいけなかった。ピッキングの効率化に良い製品がないか考えた結果、オートストアを導入した」と説明する。

オートストアの自動倉庫システムは最終的に保管スペースの設置形式の柔軟性などを評価して選択した。例えば、SICの建物内にぴったりと収まり、天井スペースも有効に使えるよう、SICの建築に合わせて床面を1.6m掘り下げ、より多くのビンを格納できるようにした。湿気がたまらないよう、結露防止マットや空調を活用している。

中島氏は「当社の場合、計測器が売れれば売れるほど消耗品も出ていく。出荷が滞ると販売の機会損失が増えるだけに、オートストアの自動倉庫システムの位置付けは非常に大きい。業容をさらに拡大していきたい」と意気込みを示している。


(左から)東亜DKK・中島氏、齋藤氏、オートストア自動倉庫システム代理店のオカムラ・近藤慎一物流システム事業本部物流システム営業部営業部長、AutoStore System・安高真之マネージングディレクター

(藤原秀行)

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