内閣府経済社会総合研究所がリポートで試算、4割が飲食料品業界
内閣府経済社会総合研究所は2024年11月11日、「『2024年問題』による物流費上昇の背景と物価に与える影響について」と題するリポートを公表した。
この中で、道路貨物輸送の運賃が10%アップし、全て商品の最終価格に転嫁された場合、物価全体を0.2%程度押し上げる可能性があるとの推計を公表した。
同研究所は、実際に物流費の上昇分を販売価格にどの程度転嫁するかは各企業の判断となるため、ある程度の幅を持ってみる必要があると断った上で、「運送サービスが利用される割合が高い飲食料品製造部門や、飲食サービス等の対個人サービス部門をはじめ、様々な財・サービス価格を押し上げる可能性があることが示唆される」との見方を示した。
その上で「 国民生活やわが国経済を支える社会インフラとして機能している物流に係る費用は、物価の変動要因であるだけでなく、物価と賃金の好循環の実現に向けても重要な要素であり、今後の動向を注視していく必要がある」と指摘した。
試算は、産業ごとに生産・販売などの取引額を取りまとめた「産業連関表」の直近の2020年版を活用した。
物価全体を0.2%程度押し上げると見込んでいるうち、飲食料品は0.075%で上昇分全体の4割ほどを占めており、影響の大きさが目立つ。他は道路貨物輸送が0.034%、道路貨物輸送以外の運輸・郵便が0.002%、対個人サービスが0.017%などとなっている。
リポートは、総務省や日本銀行などの統計、調査結果を踏まえ、2024年問題に起因する物流費上昇の背景には、時間外労働の上限規制適用による運送業界を取り巻く人手不足のさらなる深刻化による需給ひっ迫と、人手不足への対応のために引き上げた人件費などの転嫁の進展という2点があると分析。
産業全体で物流費の上昇分を商品やサービスの価格に転嫁する動きが進んでいることも挙げられると説明した。
最後に「今後、懸念されている物流の停滞を招くことなく、持続可能な物流を実現していくにあたっては、物流事業者、荷主事業者、さらには一般消費者も含めて、より一層の物流効率化の取組が不可欠であるが、物流費の上昇に対し、サプライチェーン全体で適切な価格転嫁が行われることも重要である」と訴えた。
(藤原秀行)