米企業に出資も、「30年までに年間50万KL供給」体制実現目指す
出光興産は1月9日、環境負荷の低い持続可能な航空燃料「SAF」の原料として活用が見込まれている非可食の油糧作物ポンガミアの試験植林を、1月中旬から豪州クイーンズランド州で開始すると発表した。
試験植林は10年以上にわたるポンガミアの栽培知見と研究成果を有し、商業生産の実現を図っている米国のTerviva(テルビバ)と共同で実施する。併せて、出光はTervivaに出資した。具体額は開示していない。
出光によると、豪州でポンガミアを試験植林するのは日本企業では初めてという。出光は2030年までに年間50万kLのSAF供給体制を構築することを計画しており、徳山事業所(山口県周南市)では植物油などを水素化処理して得られる水素化エステル・脂肪酸からSAFを製造する「HEFA技術」を駆使し、年間25万kLのSAF生産を2028年度に始めることを目指している。
ただ、SAFの需要拡大に伴い、原料は今後需給の逼迫や価格変動が起こることが予想され、安定的な確保が課題となっている。出光はポンガミアの自社栽培・油の活用が、長期にわたって安定的かつ経済的な原料確保につながると見込んでおり、商業規模への拡大を視野に入れて試験植林に臨む。
出光は試験植林を通じて、ポンガミアの長期安定的な栽培方法や、栽培からSAFを生産するまでのサプライチェーンの最適化の方法などを検証する。植林によるカーボンクレジット(温室効果ガス排出枠)の創出、殻のバイオマス発電所向け「ブラックペレット」化、搾りかすの家畜飼料としての利用など、SAFの原料以外としての活用の可能性についても追求する。
Tervivaによる苗木の育苗
ポンガミアの種子と圧搾して得られた油(いずれも出光興産提供)
東南アジアやオセアニアに分布するマメ科植物ポンガミアは油収量効率が良いことが特徴。これまで商業栽培されたことがなく、長期安定的に高収量の油を得るためには、優良品種の厳選と生産技術に加え、その栽培ノウハウの蓄積が重要になる。
今回の試験植林は、非農業エリアにおける栽培を検証するため、豪州の石炭資源会社Stanmore(スタンモア)の協力を得て、同社が管理・運営する約50ha(東京ドーム約11個分)の石炭鉱山の周辺用地で行う。
(藤原秀行)