ROE10%以上の水準維持も、不採算事業てこ入れや組織改革図る
山九は5月12日、東京都内で2025年3月期連結決算と、現行の中期経営計画の見直しに関する説明会を開催した。このうち、中計最終年度の26年度(27年3月期)の連結業績目標について、売上高を旧来見通しの6300億円から6600億円に、営業利益は422億円から470億円にそれぞれ引き上げた。また、ROE(自己資本利益率)は最終の26年度まで10%以上の水準を維持することを提示している。
25年3月期は売上高と営業利益が過去最高を達成したものの、コスト上昇など経営環境の変化が想定以上に速いことを踏まえ、不採算事業のてこ入れや組織の改革による運営コスト抑制などで物流事業の構造改革を促進し、収益基盤の強化を図ることを鮮明に示している。
説明会で山九の中村公大社長は物流事業について「ROE10%のその先を目指すためには、事業の構造改革が必須。コスト構造を見直していきたい」と語った。
中計はセグメント別の経営目標として、物流事業は営業利益率向上、機工事業は売上高拡大を設定。このうち物流事業は25年3月期実績の売上高2956億円、営業利益97億円、営業利益率3.3%から、最終の27年3月期にそれぞれ3120億円、120億円、3.8%まで高めるシナリオを描いている。
具体策として、工場の構内・生産物流に強みがあることを生かし、鉄鋼・化学・電機電子業界の物流需要をさらに獲得していくことを打ち出している。また、管理部門を本社物流事業本部に、オペレーション部門は全国の支店・関連会社にそれぞれ集約して経営を効率化と運営コストの抑制につなげる。
併せて、景気悪化で売り上げが落ちている中国の物流事業は倉庫スペースと要員を20%削減するなど抜本的に見直し、中国現地法人の利益率を24年の1.0%から26年に3%台まで改善させることを目指す。
機工事業は新たにサウジアラビアで完成した人材育成・プラントメンテナンス拠点を活用し、グローバルで人員を動員できる体制を構築して売り上げを伸ばすことなどを盛り込んでいる。
説明会で中村社長は「顧客の工場内で構内・構外物流ができる事業者は限られる。機工事業と物流事業の両方を持つ優位性を発揮し、プラント設備の工事や構外物流への展開を拡大していきたい」と強調した。
(藤原秀行)