【現地取材】佐川・笹森社長、越境ECやコールドチェーンなどの領域注力を強調

【現地取材】佐川・笹森社長、越境ECやコールドチェーンなどの領域注力を強調

日本郵便の業務代行「物流は絶対に壊してはいけない」との思い表明

佐川急便の笹森公彰社長は9月1日、東京都内の東京本社内で、物流業界メディアの取材に応じた。

今年4月に就任した笹森社長は「佐川があってよかったと思っていただける会社にしたい。その思いは今も変わっていない。お客様にできることをしっかり探していくことがすごく重要だ。消費者のためになることをしないとわれわれを選んでもらえない」との決意を表明。



2025年度にスタートしたSGホールディングス(HD)グループの新たな中期経営計画が打ち出している通り、宅配便、越境ECなどの国際物流、コールドチェーン(低温物流)、消費者が立ち寄る場所にECで購入した商品を届ける「リアルコマース」といった領域に注力する方針を強調した。


取材に応じる笹森社長

越境ECに関し「国内の人口が減少する中、お客様がどこを見ているかというと海外。われわれもそこにしっかり目を向けるべき。どう伴走できるか考えた時に(包括的な)サポートシステムを開発した。お客様が海外に販路を広げられるお手伝いをこれからもしていきたい」との考えを示した。

コールドチェーンに対しては「冷凍と冷蔵のいずれもラストワンマイルで配送できる会社は日本の中で(佐川を含めて)2社しかない。当社は問屋さんやメーカーさんとラストワンマイルをつなげられるし、ワンストップで(サービスを)提案できる。まだまだ課題に向き合ってやれることはたくさんある」と述べ、事業の成長に自信をのぞかせた。

コールドチェーンに関し、冷凍・冷蔵拠点を自前で構築するか、外部の賃貸物流施設を利用するかどうかについては「委託先で冷凍・冷蔵倉庫を探してもなかなか見つからない。それくらいリソース不足になっている。エリアごとに最適解を見つけていきたいので、そこはケースバイケースで考えていきたい」と回答。SGHDが昨年買収したC&Fロジホールディングスグループの倉庫などのアセットも有効活用していきたいとの思いを語った。

宅配の取り扱い個数がヤマト運輸や日本郵便ほど伸びていないことについて考えを問われたのに対し、笹森社長は「適正運賃の収受を経営課題の中心に据えていた。個数が伸び悩むのは想定した範囲内で推移していた。世の中で動いている宅配のサイズ感も少し変わったのではないか。フリーマーケットとの位置付けのサイトなどが増え、小さいものが動くようになった。この領域はポスト投函サービスを持たれているところが増やしてきた」と指摘。



同時に「外に目を向けた越境ECやリアルコマースなど、成長としてアップデートできそうなパートについては宅配便でもしっかり成長しつつ、国際の領域でも成長するところを柱に切り替えていきたい」と語った。

日本郵便の点呼不正問題で、同社が事業許可を取り消された輸送業務を佐川急便などの同業に委託していることについては「物流のインフラが壊れることは絶対に起こしてはいけないと思うので、日本郵便さんからいただいた集荷代行のオーダーに対応させていただいている」と述べ、競合であっても柔軟に協力していく考えを明らかにした。

(藤原秀行)

経営/業界動向カテゴリの最新記事