不動産証券化協会と三井住友トラスト基礎研が私募ファンド実態調査、「今後の動向には注視必要」と指摘も
不動産証券化協会と三井住友トラスト基礎研究所の両者は9月19日、不動産私募ファンドに関する実態調査結果を公表した。
今年6月末時点の不動産私募ファンドの市場規模(運用資産額ベース)は44.9兆円と推測しており、前回調査時の2024年12月時点の40.8兆円から10.0%拡大した。
日銀の政策金利引き上げ、米トランプ政権の関税見直しなど不動産市場への影響が出そうなイベントが複数あったが、両者は「結果として不動産私募ファンド市場へのマイナスのインパクトは観測されていない」と指摘した。
国内で金利がこの先、上昇していくとの見方が金融界などで広がっているため、「一部のエクイティ投資家に慎重姿勢がみられるものの、日本への投資を積極化させている海外投資家も目立ち、デット調達環境も特段変化がないとする回答が多い」という。
建築費高騰による投資方針の変化も現状では限定的のようだが、両者は「今後の動向には注視が必要」と説明している。
調査は今年7~8月、日本国内の不動産を対象に不動産私募ファンドを組成・運用している不動産運用会社155社を対象に、6月末を基準としてアンケートを送付。92社から回答を得た。有効回答率は59.4%だった。
エクイティ投資家の投資意欲(83社回答)は「変化はない」が71%で、前回調査時の今年1月時点(77社回答)の77%から6ポイント下がった一方、「高くなってきている」は4%から7%に小幅上昇。だた、「低くなってきている」も19%から22%に拡大しており、一部に慎重な見方が出ていることをうかがわせた。
国内投資家の不動産の種別投資額は、物流は「増加」が4%で前回の7%から3ポイント下がったものの、「やや増加」は5%から13%に上昇。「変化なし」は69%から65%、「やや減少」は22%から19%となった。「減少」は前回に続いてゼロだった。
「増加」と「やや増加」を合わせた割合は17%で、ホテル(50%)、住宅(36%)、データセンター(28%)、オフィスビル(19%)には及ばなかった。
一方、海外投資家の同じ設問への回答は、物流は「増加」がゼロ(前回調査時ゼロ)、「やや増加」が6%(3%)、「変化なし」が72%(86%)、「やや減少」が16%(8%)、「減少」が6%(3%)で、投資額を減らす動きが強まっていることを示唆した。ホテルやデータセンターなど成長しているセクターに重点を移している可能性がある。
建築費高騰に関する投資方針変化については(回答86社)、「あった」が22%、「なかったが、今後の建築費高騰によっては投資方針変更を検討する」が25%、「なかったし、今後も当面ない」が53%だった。慎重な見方が一定数あることを示した。両者は「取得総額が相対的に小さい地方物件への投資を積極化する姿勢が見られる」と分析している。
(藤原秀行)