Azoop調査結果、運行の安全性と現場摩擦が懸念材料
Azoopは12月11日、運送従事者111人を対象に実施した、政府が2024年12月に開始した特定技能外国人ドライバー制度に関する意識調査結果を公表した。
運送会社の人手不足感や制度の認知度は高い一方、回答社の6割以上が特定技能外国人ドライバーの採用に消極的だった。また、運行の安全性、日本人ドライバーとのコミュニケーションや文化の違いが懸念材料となっており、採用を検討する層と消極な層のいずれも行政や支援機関に費用・教育・トラブル発生時の支援を求めていることも分かった。
2024年12月、特定技能制度に「自動車運送業」を追加。同制度は即戦力となる外国人材を受け入れるための在留資格制度で、特定技能外国人ドライバーになるためには、自動車運送業分野の運転技能と日本語能力試験の両方に合格する必要があり、企業側も外国人材の受け入れ体制整備が求められている。
出入国在留管理庁の「主な国籍・地域別 特定産業分野別 特定技能1号在留外国人数」によると、今年6月末時点で特定技能「自動車運送業」の人材は計10人。一方で、既に大手企業を中心に採用活動が始まっており、登録支援機関の利用や自社による海外育成機関の設立といった動きも出ている。
アンケートの回答主体は、中小・小規模の運送事業者が約8割を占めたほか、回答者の約8割が社長・役員(36.0%)または部長・課長(39.6%)といった企業のマネジメント層となっている。

回答者の83.7%がドライバーの人手不足を感じており、特定技能外国人ドライバー制度の認知度は96.3%と極めて高くなっている。
一方、採用に向けて「まだ何もしていない」企業が約半数を占め、強い人手不足を感じながらも、運送会社が採用に踏み切れない現実が浮き彫りになった。

特定技能外国人ドライバー制度への関心がない、または採用を検討しないと回答した企業が6割以上に到達。Azoopはこうした採用に関心がない層が最大の障壁として挙げたのは「日本語能力や運転技術に関する懸念」(66.2%)で、運送業界の根幹を成す安全を最優先する企業の意思が伺えるとみている。
また、特定技能外国人ドライバーを採用した経験がある企業が最も大変だったこととして、「既存の日本人従業員とのコミュニケーションや文化の違い」を挙げており、採用後の現場での摩擦が現実的な課題になっていることが示された。


特定技能外国人ドライバーの採用を検討する企業(35.2%)がその理由として、約8割が「日本人ドライバーの採用が困難であるため」を挙げ、圧倒的な主要因となっている。
「国の制度として導入されたため、情報収集・検討を進めたい」「将来的な事業拡大を見据えているため」が10.8%、「外国人材の多様なスキルや経験を活かしたいため」という回答は2.7%だった。Azoopはこの結果から、現在は特定技能制度の活用を経営戦略的な検討というより、差し迫った労働力不足への対応策として位置付けられている様子がうかがえるとみている。

特定技能外国人ドライバーの採用を検討する層(35.2%)と検討しない層(64.8%)の双方で、行政や支援機関に求めることの上位3項目が「費用面の補助金や助成金」「日本語教育や日本の交通ルールに関する研修プログラム」「トラブル発生時の法的支援」となった。
物流業界全体で採用前後のコスト投資を重く感じていることに加え、日本独自の交通ルールやコミュニケーションが採用後の運用に関わる大きな懸念材料になっていることを示唆している。


母数は少ないが特定技能外国人ドライバーの採用実績がある企業も、採用の過程で様々な困難に直面しており、中でも最も求められたサポートとして「在留資格申請・入管手続きに関する個別相談」が多く挙がった。採用経験企業の8割以上が登録支援機関を利用している点からも、行政の手続きの煩雑さが採用時の課題であると考えられるという。

■調査概要
調査主体:株式会社 Azoop
調査方法:インターネット調査(Googleフォームによる)
調査対象:運送業界に携わっている人
有効回答数:111件
調査期間:2025年9月1~30日
(藤原秀行)※いずれもAzoop提供







