企業の「価格転嫁率」、円安やコストアップで再び4割下回る

企業の「価格転嫁率」、円安やコストアップで再び4割下回る

帝国データ調査、改定までの期間は短縮傾向

帝国データバンクは8月28日、全国2万2350社を対象に、「価格転嫁」に関するアンケート調査を実施した。前回は今年2月に実施しており、今回が8回目。

7月調査時点の価格転嫁率(コスト上昇分のうち、どの程度商品の価格やサービスの料金に転嫁できたかを示す)は39.9%となり、再び4割を下回った。項目別では、人件費、物流費、エネルギーコストの転嫁は3割前後にとどまった。

半面、価格改定までの期間は短縮傾向が見られたという。帝国データは「価格転嫁は『実施』から『十分な転嫁』と『継続的な価格改定』を問う段階に入り、定期的な価格協議ができる取引環境の整備が不可欠となっている」と指摘した。

調査期間:2026年7月17~31日(インターネット調査)
調査対象:全国2万2,350社、有効回答企業数は1万518社(回答率47.1%)

コストの上昇分に対して『多少なりとも価格転嫁できている』と回答した企業は75.8%で、前回の今年2月調査時(76.9%)から1.1ポイント低下した。

内訳は「10割すべて転嫁できている」が3.4%、「8割以上」が13.0%、「5割以上8割未満」が17.5%で、「5割以上転嫁」できている企業の合計は33.9%だった。

その一方、「2割以上5割未満」は17.4%、「2割未満」は24.5%、「全く価格転嫁できない」は11.9%で、「転嫁が5割未満」が53.8%に達した。およそ8社に1社がコスト上昇分を販売価格に全く反映できていないことになる。

帝国データは「価格転嫁は広く行われているものの、実態としては小幅な値上げや一部費目のみの転嫁にとどまる企業が多いと考えられる」と分析している。

「価格転嫁率」は39.9%で、前回調査の42.1%から2.2ポイント低下し、再び4割を下回った。25年7月に実施した前々回調査の39.4%は上回ったものの、帝国データは「前回見られた改善の動きは続かず、価格転嫁には頭打ち感が表れている」とみている。

企業規模別の価格転嫁率は、大企業が41.6%、中小企業が39.7%、小規模企業が38.3%となり、規模が小さくなるほど価格転嫁率が低下している。価格決定力や交渉力の差を反映したものとみられる。

サプライチェーン別に価格転嫁の状況を見ると、「化学品卸売」(63.2%)や「鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売」(53.5%)、「機械・器具卸売」(51.3%)など、卸売業の業種を中心に、転嫁率は5割を超えたものの、全体的に前回調査と比較して低下している様子が表れたという。

また、消費者に近い川下に位置する業種の「各種商品小売(食品スーパー)」(33.1%)や「飲食店」(28.7%)、「旅館・ホテル」(23.0%)などでは、継続的な価格転嫁が難しく、「価格転嫁すると集客できなくなるのではないかという不安から、値上げに踏み出せない」(飲食店、兵庫県)や「競合先との価格競争の中、価格転嫁するのは難しい。特に競合相手が資本力のある場合、価格で勝てる見込みは少ない」(各種商品小売、山梨県)といった声が企業から寄せられた。

さらに、「市場の相場によって価格が決定するため、コストを価格転嫁することが実質できない」(農・林・水産、長野県)や「収入の大部分が介護報酬によるため、自社独自の価格設定はほとんどできない」(医療・福祉・保健衛生、岡山県)など、価格決定権が弱く、容易に価格を改定できない業種・業態では、コスト増を自社で吸収せざるを得ないケースも多かった。

そのほか、手数料などが法令で定められている「不動産」(25.9%)や、ゲームセンターのように1ゲーム当たりの料金を容易に変更できない「娯楽サービス」(17.7%)も価格転嫁率は低水準で推移している。

これまで、消費者に近い川下産業や、公的価格、契約、取引慣行などによって価格決定権が制約される業種ほど、価格転嫁が難しい傾向が指摘されており、帝国データは「今回も同様の結果が表れ、こうした構造的な課題は解消されていない」と懸念を示した。

さらに、自社の主な商品・サービスで、代表的なコストの原材料費、人件費、物流費、エネルギーコストを項目別にそれぞれどの程度転嫁できているかを尋ねたところ、価格転嫁率が最も高かったのは原材料費の47.3%だった。次いで物流費が34.5%、人件費が32.0%、エネルギーコストが29.6%となった。

帝国データは、原材料費は仕入れ先からの価格改定通知や市況データなど、コスト上昇を客観的に示す資料が得やすいため、価格改定の根拠を取引先に説明しやすく、他の費目に比べて転嫁が進んでいると考えられると解説。

一方で、人件費、物流費、エネルギーコストは、複数の商品やサービスにまたがって発生することが多く、個別の販売価格との対応関係を示しにくい上、間接費として扱われやすいことも、転嫁を難しくしていると推察している。

価格転嫁までの期間について尋ねたところ、「変わらない」が38.4%で最も高かった。次いで「短くなった」が26.3%、「長くなった」が7.6%、「今回が初めての価格転嫁だった」が2.5%となった。

「短くなった」が「長くなった」を18.7ポイント上回っており、企業がコスト上昇を認識してから価格改定に動くまでの期間は、全体として短縮する方向にあることがうかがえた。

帝国データは急激な円安による輸入物価の上昇や、値上げに対する社会的な理解が以前より広がったことに加え、「企業側でも価格協議の定期化や原価管理の強化が進み、コスト上昇に対する意思決定が迅速になった可能性がある」との見方を示している。

業界別に「短くなった」企業の割合を見ると、『製造』が34.6%で最も高く、『卸売』が30.3%、『運輸・倉庫』が27.9%で続いた。原価の変動を把握しやすく、仕入価格と販売価格の関係が比較的明確な業界ほど、価格改定までの期間が短縮しているという。

価格転嫁率は前回より低下したことを考えると、帝国データは「企業が従来よりも早く価格交渉や値上げに動いても、仕入価格の上昇スピードがより早まる中で、顧客離れや販売数量の減少を懸念し、値上げ幅を抑えている可能性を示している」と語っている。

(藤原秀行)※いずれも帝国データバンク提供

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