【独自】災害時に自治体の負荷軽減図る「支援物資管理DX」、熊本地震の現場で始動

【独自】災害時に自治体の負荷軽減図る「支援物資管理DX」、熊本地震の現場で始動

NTTデータと佐川が軸、手作業から脱却

今年7月に熊本で起きた大地震で、NTTデータと佐川急便が軸になり「支援物資管理DX」が本格的に始動した。被災地へ大量に送り込まれる支援物資を自治体担当者が適切に管理できるシステムを立ち上げ、被災地に必要なものを迅速に届けられるようにした。担当者の負荷を減らし、迅速な復旧・復興を後押しできると見込む。


SGホールディングスグループが地震で被害が出た熊本県宇城市に開設した臨時倉庫を運営している様子

「防災BPO」の枠組みで実施

NTTデータと佐川急便の両社は2025年3月、防災連携協定を締結した。近年、災害が頻発し激甚化も進んでいるため、NTTデータのデジタル技術と佐川の備蓄品や支援物資の管理などの災害支援ノウハウを組み合わせ、迅速な復旧・復興を後押ししていくのが狙いだ。両社を軸に、それぞれのグループ企業も連携して取り組んでいる。

両社はこれまでにも、自治体に防災施策を共同で提案するなど協業を進めてきた。その具体的な連携の第1弾となったのが、熊本県で今年7月に起きた大規模な「令和8年熊本地震」だ。県内の宇城市と氷川町で震度7を観測するなど、広域で激しい揺れを記録。内閣府によれば、10月5日の時点で死傷者が400人を超え、住家は全壊と半壊が1万棟を上回るなど、熊本県を中心に甚大な被害が出た。そこでNTTデータグループとSGホールディングス(HD)グループが被災自治体の支援に協力して乗り出した。

地震発生直後、政府や熊本県から県下の自治体の復旧を支援してほしいとの要請を佐川が受け、NTTデータの担当も現地入りした。今回、両社グループが支援に入ったのは最も激しい揺れに見舞われた氷川町と宇城市だ。

地震発生後の被災地には政府や各地の支援団体から救援物資が届く。しかし、大量の物資が自治体の拠点に運び込まれる一方、受け取る側の自治体職員は膨大な業務に追われる中で、どんな物資がどれくらいの数量届いたかを細かく記録する余裕が足りず、拠点に山積みのままになっている場面も見られた。避難所から物資発送の要請を受けるたびに、自治体の職員が拠点で山積みになった物資をひっくり返して必要なものを探し出していた。トラックへの積み込み作業にも時間を要していた。

何が足りていて何が不足しているのか自治体がつかめていないため公式ホームページやSNSで現状必要としている物資の情報を発信できず、足りているはずのペットボトル入りミネラルウォーターが被災地に届き続けるといった非効率が生じていた。拠点の管理を担う自治体の職員も、必ずしも物資の入出庫の管理などで経験を十分詰めているわけではなかった。

そうした窮状を考慮し、NTTデータとSGHDグループが連携して、各地から届く物資を適正に管理できるようにするための情報システム構築が必要と判断した。NTTデータと佐川はもともと、平時の際に自治体が備蓄している物資を適切に管理できるシステムの開発に取り組んでいたが、大地震の発生で取り組みを前倒しさせた。開発に際してはAIを活用するなどして迅速化を図った。

枠組みとしては、官民連携の在り方の一環として「防災BPO(災害時業務委託)」の形を取っている。自治体の防災対応業務を請け負い、DXを活用することで全国から届いた支援物資が必要とされている場所へスムーズに届く体制を整えるのが狙いだ。新たな災害時支援の在り方ともいえる。

8月にNTTデータの担当が氷川町を訪れ、現地の物資拠点や避難所の運営状況を確認するとともに関係者と協議。物資受け入れの混乱を考慮し、現地に赴いた担当と東京の担当者がタッグを組み、物資管理システムの構築を急いだ。8月10日には運用を開始。氷川町の担当者と現地に滞在していた佐川の担当者の双方が使えるようにしている。

物資管理システムは、自治体の拠点に届いた物資の入庫と出庫のタイミング、品目ごとの在庫状況などの情報を蓄積、リアルタイムで更新する。自治体の担当者がどの避難所向けにどの品目を何個、発送の手配をしたかを入力する。NTTデータ社会コンサルティング事業本部第四SDC事業部の中島晃治リードコンサルタントは「災害発生直後は入出庫や管理のルールが決まっておらず、自治体の担当の方々がエクセルを各自の判断で作成しているような状況だった」と振り返る。

物資管理システムの立ち上げに当たっては、ECサイトで商品を購入するかのように、入出庫の管理や在庫の把握の経験が多くない自治体担当者でも簡便に操作できるようにすることを心掛けた。一方、現場の物流を担っている佐川の担当者向けには、保管場所をより精緻に記録できるようにするなど、高機能にしている。

物資管理システムの運営開始で在庫の状態を100%可視化。当時は氷川町の救援物資の在庫が約21万点に膨れ上がっていたが、町の担当者がどこの避難所に何が足りていないのかといった状況を正確につかめるよう改善できた。ミネラルウォーターは足りているといった情報をホームページやSNS経由で外部に発信することも可能になった。

物資管理システムは町の担当者らに運営を引き継いだ。SGHDグループによる効率的な在庫管理と輸送も相まって、負荷を減らせるようになった。町の担当者は復旧・復興が進むに従い、家屋が全壊・半壊した人への罹災証明の発行など、必要とされる業務にリソースをより費やせるようになる。

中島氏は「自治体の職員の方々がシステムを『自走』していただけるようにすることが重要。そのためにも使いやすいシステムにする必要がある」と指摘する。佐川急便営業部の柳太郎地域創生課長は今回の熊本地震の経験も踏まえ、「規模などが同じ災害が起きることは絶対になく、それぞれの災害で状況は大きく異なる。それだけに、平時から連携をもっとしっかりと取っておく必要があると感じている」と語る。


氷川町の担当者とNTTデータ担当者の打ち合わせの様子

「広域で利用可能」も視野に

NTTデータと佐川は氷川町で進めてきた支援の運用形態や実績を引き継ぎながら、やはり被害が大きかった宇城市にも支援に入った。NTTデータの担当者らが8月下旬、現地に入り、物資拠点の現状などを同じく見て回った。宇城市はSGHDグループの佐川防災サポート財団が臨時で大型テントを現地に建て、そこが支援物資を受け付けるという形を取っていた。

やはり宇城市でも担当者が在庫の状況などをその都度調べて把握していたため、他の被災者支援業務に充てるべき時間を取られていた。氷川町と同じく物資管理システムを立ち上げ、現状の把握をサポートした。今回物資支援システムを短期間で立ち上げられた経験を生かし、NTTデータと佐川は他の自治体でも使えるようにしたい考えだ。

NTTデータの社会DXコンサルティング事業本部第四SDC事業部の鈴木貴博課長代理は「自治体ごとに業務のやり方や抱えている地域の特性には差があるので、標準的なシステムとはどうしても求められる機能などでギャップができてしまう。そのギャップをどこまで調整できるかが課題であり、その点は注力していかないといけないと思う」と語る。NTTデータと佐川は個々の自治体にとどまらず、広域の自治体間で物資支援システムを使えるようにすることも視野に入れている。政府が展開する緊急支援物資管理システムとの連携強化も重要なテーマだ。

(藤原秀行)※いずれもNTTデータと佐川急便提供

災害/事故/不祥事カテゴリの最新記事