【独自取材】ドローンに加え「空飛ぶクルマ」の物流活用も期待

【独自取材】ドローンに加え「空飛ぶクルマ」の物流活用も期待

JUIDA・鈴木理事長新年インタビュー(前編)

ドローン(無人飛行機)の産業利用促進に取り組む日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の鈴木真二理事長(東京大名誉教授、東京大未来ビジョン研究センター特任教授)はこのほど、新年を迎えるに当たってロジビズ・オンラインの単独インタビューに応じた。

鈴木理事長は、新型コロナウイルスの感染拡大下でもJUIDA会員が増えるなど、ドローンの普及に挑む動きが日本各地で広まっていると歓迎。都市部だけでなく地方エリアでもドローン活用を目指す流れを支えるため、JUIDAとして展示会開催などを通じて情報発信することを模索していく考えを示した。

また、ドローンと同じく国内外でさまざまなメーカーなどが開発を進めている、長い滑走路を使わずに離発着が可能な「空飛ぶクルマ」について、ドローンより重量のある荷物を運べることを踏まえ、物流への活用に期待を示した。鈴木理事長の話を3回に分けて紹介する(インタビューは昨年12月、オンラインで実施)。


鈴木理事長(JUIDA提供・クリックで拡大)

インドネシアで海外初の認定スクール

――2020年は物流を含め、あらゆることが新型コロナウイルスの感染拡大に影響され続けた1年間でした。JUIDAの活動を振り返ってみていかがでしたか。
「さすがに新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言が出された4~5月ごろはJUIDA会員の伸びも少しペースが鈍化しましたが、実はその後は以前より急ピッチで増えています。JUIDAが認定した、ドローンの安全運航などを担える人材を養成するスクールで技能証明や安全運航証明を取得される方も私たちの予想以上に伸びました。スクール自体も新たに開校する動きが秋以降も続きました」
「こういった厳しい時期にも、新しい領域にチャレンジされる方が続いているのはとてもうれしいですし、そうした方々にJUIDAとしても提供すべきものを提供できたのではないかと自負しています。ドローン自体もコロナ禍で人同士の接触を減らす『非接触』の重要性が高まり、医薬品の輸送などで有効性が注目されているのではないでしょうか」
「一方、毎年開催してきたドローンの国際展示会『Japan Drone(ジャパンドローン)』は3月に開催を決めていましたが、コロナ禍でやむなく9月末に延期し、会期も例年の3日間から2日間に短縮しました。出展される方はかなり減ったため、運営的には厳しかったのですが、オンラインでセミナー視聴を受け付けるなど工夫した結果、ビジネスに直結するイベントとして非常に密度の濃いものが開催できたと思っています」
「JUIDAとして以前より注力している海外のドローン関連団体の方々との交流がこの1年、制限されてきたのはとても残念でした。ただ、昨年2月にはインドネシアでJUIDAの認定スクールが初めて開校されました。コロナ禍の状況が改善されていけば、また海外でのJUIDA認定スクールも広がっていくのではないでしょうか。期待しています」


インドネシア初のJUIDA認定スクールとなったMoestopo(ムストポ)大(JUIDAプレスリリースより引用・クリックで拡大)

――JUIDA認定スクールはドローンの産業利用を後押しする意味でも非常に大きな役割を果たしていそうですね。
「そうですね。首都圏は割と早い段階でスクールが開設されましたが、これからも全国規模で設置が広がっていくのではないでしょうか。例えば、北海道の方とお話する機会があったのですが、流氷が海岸に押し寄せてくる時期に、ドローンを使えば上空から安全かつ迅速に様子を確認できるからいいですね、というお話がありました。ドローンは地方での活躍が期待されている部分もありますから、全国で認定スクール開校などの動きを広げていかないといけないと感じています」

――ドローンはいわゆる「買い物難民」の支援などで、地方自治体が非常に注目しているとの話もよく聞きます。JUIDAとしてどう対応していきますか。
「先ほどお話ししたジャパンドローンも、これまで首都圏でずっと行ってきましたが、今後は地方でもドローンの活用促進に向け、展示会の形がいいのかそれともセミナーがいいのか、どういう企画がいいのかJUIDAの中で議論しているところです。ドローンの利用状況などの実態を理解していただいたり、ニーズをちゃんと吸い上げたりできるような仕組みを構築できればいいかなと考えています」
「ジャパンドローンの際、地方自治体の方々も出展してくださったのですが、なかなか情報が自分たちのところまで伝わってこないということを課題として挙げておられました。自分たちで工夫してドローン活用に取り組むにしても、やはり他の地域でうまく行っている事例を紹介してもらうとか、逆にこういうところが課題としてあったとか、そういった貴重な情報をシェアできる機会を確保することも大事だと思いますから、これからどういうふうにJUIDAとしてお役に立てるかを検討しているところです」

ドローンと離発着場共有も

――昨年のジャパンドローンは、初めての試みとして、広大な滑走路なしに離着陸が可能な「空飛ぶクルマ」にスポットを当てていました。かなり関心を集めたのでは?
「おっしゃる通り、来場された方のアンケートを拝見していても、ドローンに加えて空飛ぶクルマも積極的に展示を考えてほしいとのご要望を頂戴しています。今年のジャパンドローンは6月に開催を予定していますので、その時にはより多くの、実際に開発を行っている方々が扱う空飛ぶクルマを展示していきたいと思っています。現在はドローンを大型化したものの先に空飛ぶクルマがある、と皆さん捉えておられるので、一緒に展示会をやるということに関しては非常に期待が大きいように感じました」

――JUIDAはドローンの普及促進の団体ですが、今後は空飛ぶクルマにどう関わっていきますか。
「確かにわれわれは無人航空機(UAS)の団体なのでドローンがメーンではありますが、空飛ぶクルマもやはり物流に使う部分はJUIDAの活動の延長線上にあると言えます。JUIDAで今着目していることの1つが、ドローン専用の離発着場『ドローンポート』です。大型のドローンを本格的にいろんな方が共同で利用しようとすると、やはり共通の離発着場が求められるでしょう。飛行機が空港を使うように、ドローンの離発着場も標準的なものにする必要が出てくる。その際、具体的にどういったものを作るべきかとか、誰がどのように運用していくのかといったことは今、ISO(国際標準化機構)で無人飛行機を対象に検討が行われており、JUIDAも議論をリードできるよう活動を本格化しているところです。物流に用いる大型ドローンと空飛ぶクルマは離発着場を共同で使用していく状況になるのではないかと予想しています」

――物流に関してもドローンと空飛ぶクルマをうまく使い分けていくイメージでしょうか。
「そもそも何を空飛ぶクルマと言うかは、まだ定義がなかなかはっきりしていないのが実情です。ただ、個人的には空飛ぶクルマが人を乗せて運べるようになるのはもう少し時間を要するのではないかとみています。今のドローンは搭載できる荷物の重量が数キログラムですが、空飛ぶクルマは100キログラム、200キログラムをきちんと運搬できるようになる、というのが最初のステップではないかなと思っています。いわば“空飛ぶ軽トラック”みたいなものですね。しかも運転手は乗っておらず、地上から操作するというような、無人の軽トラックみたいなものが、私は日本で最初に実現する空飛ぶクルマだと想像しています」
「国内でも実際に航空機を運用されているJAL(日本航空)さんやANA(全日本空輸)さんが物流の用途で無人飛行機を使っていくことを真剣に考えておられます。地方には物流のニーズがあると皆さん認識されていますから、いつでも簡単に物を運んでくれる無人の物流システムが早く実用化されるといいですね」

――軽い荷物はドローン、重いものは空飛ぶクルマという役割分担になりそうですか。
「空飛ぶクルマは人を載せるために開発していますから、1人乗り、2人乗りであれば、パイロットが載っていなければ100キログラムくらいの荷物は簡単に搭載できると思います。そのメリットを物を運ぶために使うことが、まずは社会にも受け入れられやすいでしょうし、社会もそういうものを求めているのではないかという気がしますね」


SkyDriveが昨年8月に行った飛行実験に用いた空飛ぶクルマ「SD-03」(同社提供・クリックで拡大)

(藤原秀行)

テクノロジー/製品カテゴリの最新記事