ドライバーが報酬や書類の受け取り容易に、企業側の負荷も軽減見込む
セブン銀行と情報システム開発を手掛けるスタートアップのネバーマイルの両社が、新たなアプローチで物流業界の業務効率化や労働環境向上に取り組んでいる。セブン銀行が全国に展開しているATMを活用し、ネバーマイルの業務効率化支援システムを使う物流企業のトラックドライバーが報酬の受け取りなどを自由にできるようにすることを想定している。
全国で身近に存在しているセブン-イレブンの店舗を活用できるため、ドライバーの物流企業の双方にとってメリットを得られる仕組みだ。業務効率化支援システムは2026年度以降、本格的に展開する見通しだ。改正物流効率化法の全面施行などで物流業界は業務の効率化や迅速化を強く迫られているだけに、両社の取り組みは注目を集めそうだ。
全国2.8万台超、ファミマにも導入開始
セブン銀行は全国のセブン-イレブン店舗や商業施設、観光地、駅、空港などにATMを展開、今年8月末時点で2万8689台に上る。同じく大手コンビニのファミリーマートも今年6月以降、全国の店舗にセブン銀行のATMを順次導入しており、4年間で各店舗のATM約1万6000台を入れ替えることを計画している。台数の多さでは金融機関の中でもトップクラスで、まさに日常生活に不可欠なインフラとして存在感を高めている。
セブン銀行はATMで口座の預け入れや引き出し以外にもさまざまなサービスを利用できる「+Connect」(プラスコネクト)を展開している。「ATMが、あらゆる手続き・認証の窓口となる」世界を目指す方針を掲げ、金融機関がこれまで対面で行う必要があった手続きをATMで済ませることができるようにするなど、民間企業や行政機関といった幅広い業界に向けて多様なサービスを提供している。

セブン銀行のATM利用イメージ(同社提供)
その利便性の高さに着目したのがネバーマイルだ。同社はこれまでにも、鉄鋼業界用の配送管理システムを構築したり、ニトリグループの物流部門を担うホームロジスティクス向けに小物・雑貨商品のラストワンマイル配送の新たな配送管理システムを開発したりと、物流領域で実績を重ねてきた。
その一環として、物流業界の業務効率化を後押しするプラットフォームの開発を構想。物流企業が抱える課題の解決を促進することを念頭に置き、機能の検討を進める中で、セブン銀行のATMによる「+Connect」の存在を知り、活用できるのではないかと考えた。今年の春に両社の担当者間で協議を始め、6月にはセブン銀行と同社の完全子会社で送金・決裁サービスを担うセブン・ペイメントサービスの両社とネバーマイルが新たな物流支援プラットフォームの構築に向け連携することで基本合意したと公表した。数カ月で歩み寄ることができた。
ネバーマイルの桑原裕哲取締役CTO(最高技術責任者)は「初めてセブン銀行さんのATMでデモを拝見した時、非常に使いやすいと感じた。ドライバーさんと物流企業さんの間で指示書や現金などをやり取りする部分は、ATMの窓口業務代行と親和性があるのではないかというところから話が進んだ」と振り返る。
セブン銀行の城戸淳介ATM+企画部調査役は「物流企業は社会の基礎を支える重要な存在で数も多い。+Connectはもともと、さまざまな業界、お客様をつなぐ1つの入り口にしたいということでサービスを始めたので、その思いをかなえられるのはわれわれとしてもうれしい」と思いを語る。

ネバーマイル・桑原氏
都合の良い場所・時間に作業指示書受け取り
既に6月の発表時にも概要に触れているが、物流支援プラットフォーム経由で本格的に使えるようにするのは、「+Connect」のうち、「ATM窓口」「コンビニ証明書受取サービス」「ATM受取」のサービス3種類だ。まずATM窓口はセブン銀行のATMで銀行の口座開設や住所変更、口座の解約といった手続きを済ませることが可能だ。本人かどうかの確認は顔認証技術を取り入れるなど、利便性の向上を図っている。
コンビニ証明書受取サービスは、セブン-イレブンの店舗に配置しているマルチコピー機で、企業や学校などの団体から個人へ送付する各種証明書を24時間365日いつでも受け取ることができる。ATM受取は企業から従業員らへの送金をATMとセブン-イレブンのレジなどで原則24時間365日受け取ることが可能。メールアドレスや携帯電話番号を使って認証するため、新たな銀⾏⼝座の開設や口座情報の入力は不要で利用のハードルを下げている。

サービス提供のイメージ(プレスリリースより引用)
セブン銀行とネバーマイルは、3つのサービスを組み合わせることで、ドライバーが物流企業の事務所などに立ち寄らなくてもセブン-イレブンのマルチコピー機から作業指示書や受領書などの必要書類を受け取ったり、報酬の受け取りや経費の精算をATMで済ませたりできるようになると想定。ドライバーの業務を効率化することで人手不足への対応促進にもつなげられると見込む。物流企業側の負荷軽減も図ることが期待できる。
ネバーマイルの桑原氏は「セキュリティーの重要性が高まる中、ドライバーの個人認証も強く求められる。そうした点にも十分配慮されている」と指摘。セブン銀行の城戸氏は「+Connectの導入は通常、6カ月程度を有するが、スピード感を重視し4カ月くらいに短縮した。それはやればできるという気づきになり、非常に有意義な経験だった」と回顧する。「場所や時間を問わずに本人確認や作業指示書の印刷、報酬の受け取りができる環境を整えることで、ドライバーの労働環境向上と物流企業全体の業務効率化に貢献したい」との両社の思いが今後浸透していくことが期待される。

セブン銀行・城戸氏
(藤原秀行)







