日本UAS産業振興協議会(JUIDA)・鈴木代表理事インタビュー
ドローンや「空飛ぶクルマ」を物流に使おうとする動きが加速している。ドローンは国土交通省がガイドラインを改定し、複数機を同時運航する際の制限を緩和。空飛ぶクルマは官民の検討会で2030年代前半に貨物輸送サービス開始を目指すロードマップを公表した。荷物輸送の機体が日本の空を飛び交う日が着実に近づいている。航空宇宙工学の第一人者で、ドローンや空飛ぶクルマの産業利用促進に取り組む業界団体、日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の代表を2014年の発足から務めている鈴木真二代表理事に、展望を聞いた。

取材に応じる鈴木代表理事
※この記事は、弊社発行「月刊ロジスティクス・ビジネス(LOGI-BIZ)」2026年7月号に掲載したものを一部再編集しました
災害時の物資輸送で活躍
――JUIDAなどが主催しているドローンの国際展示会「JapanDrone」が6月3~5日に千葉市の幕張メッセで開かれました。初日は台風接近で天候が大荒れになったにも関わらず、3日間で延べ約2万人が来場するなど盛況でした。
「JapanDroneは今年で11回目、併催している空飛ぶクルマなどの『次世代エアモビリティEXPO』は5回目でしたが、出展者数と展示スペースは過去最大でした。ドローンは海外からの出展も多く、今回は韓国やベトナム、台湾など14カ国・地域に上りました。ウクライナからも初めて出展されました。ドローンの社会実装が本格的に進んでいく段階に入っていることを改めて感じられました。空飛ぶクルマへの関心も高まっていると思います」
――ドローンの社会受容性はかなり上がっていると受け止めていいのでしょうか。
「いろいろな形で役に立っているという認識が社会で共感されているように思えます。テレビを見ていると空撮にドローンを使うケースが非常に増えていますし、最近のニュースでも、例えば頻繁に出没するようになったクマをドローンで上空から探そうとしていると伝えられていました。何か問題があればドローンを使おうという動きが拡大しているのではないでしょうか」
――国内でドローンがクローズアップされるようになった大きなきっかけが、2015年4月に起きた、首相官邸の屋上に不審なドローンが落下しているのが見つかった事件です。安全に使うための法整備や制度設計が急速に進み、さまざまな用途での利用促進につながりました。この10年余りの動きを振り返って、物流を含めてここまでドローンが使われるようになると予想はされていましたか。
「ポテンシャルはあると思っていました。ただ、将来像として、荷物を搭載して街中を運ぶラストワンマイル配送を思い描いている方が多かったんですが、それは実現には時間を要するとは考えていました」
――JapanDroneの会場でも測量や農業、インフラ点検など多様な用途が提案されていました。ただ、物流に関しては、商用化したサービスがまだ本格的に各地で始まっている段階ではないこともあり、出展は他の用途に比べて決して多くはありませんでした。
「コストを考えた場合、まだ人が運んだ方が安いのは事実ですし、荷物を載せて人間の頭上を飛行するのは他の用途より難度が上がります。まだ実証実験の域を出ていないところも多いです。ただ、政府が23年に『レベル3.5飛行』を解禁し、機体に搭載したカメラで地上の安全をリアルタイムで確認することなどを条件に無人地帯での目視外飛行がより容易にできるようになりました。都市部ではまだまだ物流でドローンを使うには難しいですが、地方では医薬品などをドローンで輸送しようという試みが本格化しています」
「一般的な物流とは異なりますが、24年の能登半島地震を契機に、災害時の医薬品などの物資輸送にドローンが使われるようになってきましたし、山間部の工事現場への建設資材搬送といった重量物の輸送のために大型ドローンを開発、提供する動きも広がっています。他にも、三菱重工業さんや川崎重工業さんが災害対応や物流向けの無人ヘリコプターの開発を進めています。そうした新しいモビリティーも出てきていますので、個別の配送に加えて、重い物をたくさん一気に運ぶという部分でも自動化機器を利用できるところは多いのではないでしょうか」
――そうした動きは、日常の物流用途でドローンを普及させていく上でも知見の蓄積などでプラスになりそうです。
「その通りだと思います。さらに、国土交通省は今年6月、1人の操縦者が複数のドローンを同時に運航する際に考慮すべき点をまとめたガイドラインを改定し、同時運航できる機体数の上限をそれまでの5台から撤廃しました。ドローンを物流に使おうと思えば、コストをいかに下げるかが重要ですので、一度により多くのドローンを飛ばせるようにすることで事業の効率化を進められます。また、人口が減少して常に物流に困っているエリアは、コストがかさんでもドローンを使おうと考える方が増えているように思えますので、そういう意味ではドローンを使える場所が増えているのではないでしょうか」

今年6月開催の「JapanDrone」会場
河川上空などに「空の道」
――25年の大阪・関西万博でデモ飛行が行われ、国内外に存在を広く知らしめた空飛ぶクルマは、現状は旅客輸送の方が注目されていますが、貨物輸送に使おうという動きもありますね。
「その通りです。政府が今年3月に開催した官民協議会では、空飛ぶクルマ実用化のロードマップ(行程表)を改訂し、有償で人を乗せて運ぶ商用運航開始の時期を27~28年と明記しました。30年代前半には新たな交通管理や遠隔操縦による旅客輸送を導入し、30年代後半には自動・自律運航の一部を実現することを盛り込んでいます。まずは遊覧飛行のようなビジネスから始まることが見込まれます。その一方、貨物輸送についても20年代後半に実証を進め、30年代前半に貨物輸送サービスを開始、30年代後半に輸送網を拡大する方針を示しています」
「空飛ぶクルマは人を乗せて移動することを想定しているため、法律上はドローンのような無人航空機ではなく、ヘリコプターなどと同じく『航空機』に該当し、航空法の厳格なルールをクリアする必要があります。その実現は容易ではありませんが、SkyDrive(スカイドライブ)さんのような、日本や海外のスタートアップなどが国土交通省と連携し、商用運航と機体の量産に不可欠な、機体の安全や環境に関する性能が国の定める基準を満たしていると示す『型式証明』を日本で取得しようと取り組んでいます」
――空飛ぶクルマを物流に使う場合、どのような場面が想定されますか。
「機体が大型のため、ラストワンマイル配送に使うのは難しいですが、物流拠点間の輸送という部分で物流にも活用できますし、長い滑走路が不要で垂直離着陸できることなどから、ドローンと同じく被災地への救援物資輸送でも応用できそうです。米国では、事故などのトラブルで高速道路網が動かなくなってしまった場合の代替手段として、一般道を利用したり、船舶に置き換えたりといった手段に加えて、緊急性があるものは小型の無人飛行機で荷物を運ぶネットワークを構築しようとする構想もあります。日本でも例えば大雪で道路が動かなくなった場合などに空飛ぶクルマを使うことはあり得るかもしれません」

SkyDriveが2月に東京都内で実施した空飛ぶクルマのデモ飛行の様子
――ドローン輸送ルートの確立なども急務ですね。
「政府が中心となり、一級河川や送電線の上空を生かして大規模な『空の道』を整備する計画が進められています。先行地域として、静岡県浜松市の天竜川上空や、埼玉県の秩父エリアの送電設備上空などに大規模な航路が構築されました。政府は河川上空に1万km、送電線上空には4万kmの航路を設ける方針です。航路を事業者間で共有できるようにするなど、物流の利用も想定されています」
「ドローンを使った共同輸送を検討されているエリアもあります。物流事業者さんの間で使っているシステムが異なるのでどう対応するかといった課題はありますが、人口減少が続く中、地方で物流の機能を維持するには、物流事業者間で競争するところと協力するところを分けて考えなければいけないですし、共同利用という発想は必要でしょう」
「被災自治体と民間事業者がスムーズに契約を結べるよう、基本的な考え方や料金の決め方などを例示したガイドラインを作成しようと取り組んでいます(編集部注・今年9月には、自治体などがドローンを活用した災害対応を行う際の『手順』を章構成で取りまとめた共通のガイドラインを公表)。また、自動車のように、故障やトラブルがあった場合、わざわざメーカーに持ち込まなくても修理・整備の拠点が各地に存在し、点検などを担ってくれる環境が必要だと思います。現状はドローンの場合、機体にトラブルがあればメーカーに戻していますが、今後も需要が伸びて台数が増えればメーカーだけでは手に負えなくなるでしょう」
「おかげ様でJUIDAは会員として参加されている個人や企業、団体が今年5月末で2万2885に達しています。多くの方々と協議しながら、ドローンの一層の産業利用拡大を図る上で必要な施策を進めていきたい。26年度もドローン活用のセキュリティー強化や災害時のドローン利用円滑化などに取り組んでいきます」
(藤原秀行)







