20年1月から首都圏に500台導入、働き方改革配慮し普通免許で運転可能
※ヤマトHD・長尾社長らのコメントを追加しました
ヤマト運輸は11月19日、宅配用に特化したEV(電気自動車)トラックのメディア向け発表会を東京都内で開催した。
DHL傘下のベンチャー企業ストリートスクーターと共同開発した。働き方改革を重視する潮流を考慮し、従来の配送トラックより小型で乗り降りがしやすく、普通免許で運転可能なサイズとするなどの工夫を凝らしている。環境負荷軽減とドライバーの働きやすい環境確保の両立を図る。
ヤマト運輸は2020年1月から首都圏の1都3県で500台を順次導入、30年までに小型集配用車両の半分に相当する約5000台を新EVに置き換える計画だ。
説明会でヤマトホールディングスの長尾裕社長は「ぜひこの第1歩を大きなものにしていきたい ラストワンマイル領域におけるCO2削減に大きく貢献するとともに、ドライバーの立場で作られており、直面している課題への解決にもつながっていくと考えている」と意義を強調。
ストリートスクーターのイエルグ・ゾマーCEO(最高経営責任者)は「日本は欧州以外で初めて参入する非常に優先順位の高い大切な市場。これまでに3万7000トンほどのCO2削減に貢献してきた」とアピール。日本でも環境負荷低減に協力していくことに強い意欲を示すとともに、商用車のEV拡販へ積極的に取り組む姿勢を見せた。
説明会で撮影に応じる(左から)ドイチェポストDHLのトーマス・オグリビー取締役、ストリートスクーターのゾマーCEO、ヤマト運輸の栗栖利蔵社長、ヤマトホールディングスの長尾社長
マルチビューモニターで運転時の死角を解消
新EVは、全長4・7メートル、全幅1・83メートル、全高2・25メートル。最大積載量は600キログラムで、軽ワゴンの2倍程度を確保し、冷凍・冷蔵庫も取り入れている。荷室の高さは1・3メートルで、ゴルフバックを立てたまま収められるサイズとしている。荷室の床面は地上から90センチメートルで、荷物を積み降ろしする際にかがまずに済むようになっている。
宅配の配送で1日平均200回乗降している現状を踏まえ、運転席のシートの高さを普通乗用車並みにするとともに、ドア側の座席側面は平らにして乗り降りしやすくするよう配慮。シートヒーターを標準装備して冬の寒さ対策を講じているほか、キーレスエントリーも採用し、ドライバーの車両への接近と離脱を感知して自動で運転席や荷室の鍵を開け閉めできるようにしている。
さらに、運転席には車両の周辺をリアルタイムで確認できるマルチビューモニターを設置。ウインカーを出した方向の側面下部を自動的に映し出すなど、ドライバーからの運転時の死角を360度解消できるようサポートしている。
充電は約6時間で完了。ヤマト運輸の営業所に充電用設備を順次配備する。
シートの高さを普通乗用車並みにして乗り降りしやすいよう工夫(左)。荷室の高さはかがまずに荷物を出し入れできるようにしている