NS研究会が11回目開催、11校が参加
トラック運送業界の課題解決や経営改善を研究しているNS物流研究会(会長・樋口恵一川崎陸送社長)は11月16日、東京・越中島の東京海洋大で「第11回物流関連ゼミ学生による研究発表会」を開催した。
大学と高等専門学校の計11校で物流に関係したテーマを扱うゼミに参加している学生たちが、人手不足などの課題解決に向けた独自の提言をプレゼンテーションし、内容を競い合った。審査の結果、「データ分析に基づくピッキング業務の改善」を発表した東京海洋大・黒川ゼミが優勝の栄冠を勝ち取った。
準優勝は「中小運輸事業者の新卒採用への試み」の関西大・飴野ゼミ、敢闘賞は「物流機器に対応したラストマイルの新たな配送方法―ギグワーカーの活用―」の神奈川大・齋藤ゼミがそれぞれ受賞した。
参加した学生たち(NS物流研究会ウェブサイトより引用)※クリックで拡大
優勝した東京海洋大・黒川ゼミの学生ら(NS物流研究会ウェブサイトより引用)※クリックで拡大
優勝を獲得した東京海洋大・黒川ゼミ学生の発表
各校が発表した内容の概要は次の通り(発表順)。
【①同志社大・石田ゼミ】
「京ロジスティクス ―京都らしい新たな物流サービスの提供―」
日本有数の観光地・京都で必要な物流サービスとは何かを研究し、新たな物流サービスの提供を提案。訪日外国人観光客のために、観光地や百貨店の周辺に位置しているコンビニ間で荷物を配送、移動時の負担を軽減することなどを打ち出した。
【②朝日大・土井ゼミ】
「トラック事業における新しい駐車の形態に関する研究」
配送ドライバーが納品先の近くで車両を止めて待機している現状に対し、近隣住民への迷惑や駐車違反といった問題を生じるため、他の待機場所を探す必要があると指摘。解決のため、コンビニ店舗の駐車場を活用することが有効と分析した。
【③関西大・飴野ゼミ】
「中小運輸事業者の新卒採用への試み」
ドライバーの採用は中途でしか行ったことがない大阪のある中小運輸業者にスポットを当て、新卒採用を成功させるための方策を研究。動画系のSNSを活用して若い人たちに業務内容をアピールしたり、入社後の社員へのフォローとしてインターネット経由で学習するeラーニングを導入したりすることなどを提唱した。
【④流通科学大・田中ゼミ】
「一般ドライバーと運送業者のマッチングアプリの提案」
深刻なトラックドライバー不足の解消を目指し、運送業者が一般のドライバーに対して荷物配送を依頼できるスマートフォンのマッチングアプリを提唱。将来の規制緩和をにらんだ提案となっている。
会場で発表に真剣に聞き入る参加学生たち
【⑤東京都市大・郭ゼミ】
「需要変動を考慮した倉庫内作業の効率化」
一般的なパレット積みの倉庫で日々の商品出し入れを勘案し、庫内作業の効率化向上をサポートするため、フォークリフトの適正な台数を算出。併せて、需要の変動を考慮し、作業効率を高められる庫内のレイアウトをシミュレーション。総移動距離を10%削減できると見込む。
【⑥大阪産業大・浜崎ゼミ】
「物流現場における外国人技能実習生に関する調査」
外国人技能実習生の研修や労働の実態を調査し、良い点と改善点を分析。制度の見直しや企業側の受け入れ体制のさらなる整備で長期間の実習を可能にすることで、人手の確保と実習生の能力向上が実現できると推察。女性が働きやすい環境整備や賃金の見直しも提言する。
【⑦広島商船高等専門学校・田上ゼミ】
「若年労働者の視点から考えた物流業界の労働力問題」
物流業界の労働力不足をめぐり、男性や女性、外国人ら若年層を対象としたアンケートを独自に実施。その結果から、多くの若者が物流業界の重要性や将来性を認識しておらず、若者が仕事に求めるものが企業に伝わっていない可能性が高いと指摘。業界の魅力に関する情報の発信、より良い職場環境整備を提言する。
【⑧東京海洋大・黒川ゼミ】
「データ分析に基づくピッキング業務の改善」
実際の物流企業のピッキング業務を対象に、在庫や入出庫のデータを用いた数値分析やシミュレーションなどのOR(オペレーションズ・リサーチ)技術を活用した改善策を報告。庫内のロケーションや作業動線改善で作業時間が平均4%減らせたとの成果を基に、データ分析の重要性を訴える。
質疑応答も活発に行われた
【⑨城西大・上村ゼミ】
「過去10年間企業転入1位の埼玉を支える物流」
東京から近い割に地価が安いため用地を確保しやすい上、圏央道などの高速道路網の整備が進んでいる埼玉県は10年間企業転入全国トップを誇っている。その埼玉県を支える物流について、県内企業へのインタビューを中心に調査・分析を展開、自然災害の少なさや天候の良さも強みと指摘する。
【⑩神奈川大・齋藤ゼミ】
「物流機器に対応したラストマイルの新たな包装方法―ギグワーカーの活用―」
インターネット通販のラストマイルを担う労働力不足を打開するため、固定の労働時間にとらわれず、“すきま時間”を使って気軽に仕事をする「ギグワーカー」の活用に着目。スマートフォン用アプリを使うなどして、有効な仕組みとして運用できると主張する。
【⑪流通経済大・小野ゼミ】
「ドライバー不足解決のための外国人労働力受け入れ対策」
ドラックドライバーの深刻な不足を解決するための対策の1つとして、外国人の活用があると推測。採用が困難な現状を踏まえ、在留資格の「特定技能」にドライバーを追加するよう提案。トラック業界にも日本語能力検定試験の活用などで採用した外国人が荷主企業と円滑に意思疎通できるようサポートすることを求めている。
(藤原秀行)
研究発表会の詳細はコチラから