【独自取材】プロロジス・モガダムCEO独占インタビュー(前編)

【独自取材】プロロジス・モガダムCEO独占インタビュー(前編)

世界経済の先行き不透明感増しても、事業成長持続に強い自信

プロロジス共同創業者のハミード・モガダム会長兼CEO(最高経営責任者)はこのほど、東京都内の日本法人本社でロジビズ・オンラインの単独インタビューに応じた。

モガダムCEOは、需要の拡大などで物流施設の開発に適した用地の取得が欧米でも難しくなっている中、優良な資産を持つ同業他社をM&Aするとともに、他社が開発した個別の物流施設を取得していくことも継続する姿勢を明示した。

 
 

その上で、米中貿易摩擦や英国のEU離脱(ブレグジット)などの懸案が山積し、世界経済の先行きに不透明感が増している中でも事業の成長を持続していけることに強い自信を示した。ロジビズ・オンラインでは2回に分けて、モガダムCEOの発言を紹介する。


インタビューに応じるモガダムCEO※クリックで拡大

日本での同業M&Aは10年、20年後?

―2019年は米国で同業のインダストリアル・プロパティ・トラスト(IPT)やリートのリバティー・プロパティ・トラスト(LPT)の買収を相次ぎ発表するなど、積極的にM&Aされていますね。
「既にご存じの通り、当社はグローバル規模で、主要な物流不動産マーケットにおいて事業を展開しています。そうした中で、最近は特に大消費地に隣接するエリアで施設の開発用地を取得するのが厳しくなっています。LPTを例に挙げると、米国で大消費地のニューヨークに近いペンシルバニア州に優良な物流施設を保有していました。当社もペンシルバニア州とニュージャージー州にまたがり経済成長が著しい『リーハイ・バレー』などのエリアを重要視する中で、LPTの資産と重なる部分が多かったのです。経営層とお話する機会に恵まれ、M&Aで合意することができました」

―日本では開発用地取得が難しくなっているとかねて指摘されていますが、世界的に見ても同様の傾向なのでしょうか。
「一般的に言って、そうした傾向が見られますね。欧米などでEC化率がどんどん上がっていく中で、消費者は購入した商品を早く届けてほしい、商品自体についてもいろいろな選択肢がほしいと感じています。そのため、在庫自体を消費者により近いエリアで保管する必要性が高まっています。しかし、話が矛盾するようですが、一方で消費者は自身の居住エリアの近くに新たな物流施設を開発することを必ずしも歓迎してくれるわけではありません。そうした2つの側面から、新規開発だけではなく、良好な立地にある既存の物流施設を取得することができれば、自分たちのプラットフォームを効率良く広げることができます」

―前述のIPTは4300億円、LPTに至っては1・37兆円と巨額のM&Aになりました。今後もM&Aの検討はある程度以上の規模を持つ相手が対象となるのでしょうか。
「M&Aを検討する上で一番重要なのは、私どもが進出している地域、もしくは進出を果たしていなくても今後戦略的に重要と思われる地域に優れた資産を持っている会社ということです。しかし、なかなかそういう会社は簡単に見つけられません。実は1棟、2棟といった単位での物流施設取得は、日本ではたまたま今ケースがありませんが、グローバルではよく行っている手法です。物流施設の質が良好で立地も優れ、価格で折り合うことができればこれからも積極的に取り組んでいこうと思います。自身のポートフォリオの質を高める上で、M&Aだけにこだわっているわけではありません」

―日本でこれから同業他社のM&Aを進める可能性はありますか。
「このあたりは山田(御酒)社長をはじめ日本のスタッフが考えていく話ではありますが、日本は物流不動産開発の歴史が欧米などに比べてまだまだ浅い。開発への新規参入が相次ぎましたし、市場自体が成熟化しておらず、今後も成長していくでしょう。今はM&Aを盛んに行う状況ではないと思います。10年、20年と経過すればそうした機会も出てくるのではないでしょうか」

 
 


M&Aの狙いなどを語るモガダム氏※クリックで拡大

不測の事態にはスタンバイ済み

―事業展開している主要エリアの2019年の状況をどのように評価されますか。
「米国は需要が非常に強く、空室率はほぼゼロという、私がこの業界に入って以降なかなか見たことのないような歴史的低水準となっています。賃料も上昇しています。おかげさまで当社のビジネスも絶好調なので、10段階評価で10ですね。ファンタスティックな状態です」
「欧州は国・地域によって市場の状況が異なりますが、総じて言えば空室率が低く、施設の供給も過剰に陥っていません。比較的良好でしょう。ただ、ドイツや英国は経済状況があまりよくありませんし、英国はブレグジット(EU離脱)の問題がありますから、全体の経済情勢は10段階で5から6、供給の部分については9といった感じでしょうか」
「日本は大阪で一時、湾岸エリアの空室率が高止まりしていたのを懸念していましたが、今は需要が堅調で空室率も低下してきました。東京も同様の状況です。用地価格は非常に高く、競合も多く存在しますからこれからも地価が上がるでしょう。日本の経済状況は思ったよりも底堅く、安定しています」
「中国は経済成長が鈍化しているとはいえ、まだまだ非常に強い。数カ月前に中国を仕事で訪れ、そうした状況を肌で感じました。用地取得は非常に難しいのですが、長期的に見ればマーケットはまだまだ伸びそうですし、ビジネスチャンスは存在しています。総合評価では中国がトップで米国が続き、日本と欧州が同程度、最後は南米という順番になるでしょう」

―確かに米国経済は堅調ですが、米中貿易摩擦は依然収束していませんし、先ほど触れたブレグジットの問題もあります。世界経済の先行きが不透明なことへの懸念が強まっているように思えます。御社の事業への影響はどのようにとらえていますか。
「意外に感じられるでしょうが、経済の先行きへの懸念が強まると短期的にはわれわれの事業にはプラスになります。企業が在庫を持つようになるためです。必然的に物流施設への需要も高まります。ただ、仰る通り、長期的に見れば投資を手控えるなどのリスクが生じますから、物流施設の需要はあまり伸びなくなるでしょう」

―そうしたリスクへの備えは?
「対策の1つとして、常日頃からレバレッジを非常に低く抑えています。借入金の比率が非常に低い。そのため、財務格付けも不動産セクターで一番高いものを頂戴しています。物流施設専業の不動産会社としては最大規模なので、経営の効率性を高めています。かつてのリーマンショックのようなことは、金融機関も結構保守的で健全な経営をされていますから起こらないとは思いますが、何らかの影響で市場成長がスローダウンしたとしても、われわれはそこが逆に、当社の競争力ある施設を提供できるビジネスチャンスだと思っていますし、不測の事態にうまくスタンバイできています」

―物流施設開発は基本的に現状のペースを続けますか。
「現在は基本的に年間30億~35億ドル、日本円でざっくり言って4000億円くらいですね。その半分がBTS型です。入居されるお客さまが決まっていますから先行きのリスクは低い。残りのマルチテナント型はBTS型に比べればリスクはありますが、開発するマーケットを吟味し、供給が多くなくて物流のハブとなるエリアをターゲットに据えています。引き続き安定的に開発していきたいと考えています」

(本文・藤原秀行 写真・中島祐)

 
 

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