国交省が旅客減で苦境の業界救済、効果確認のトライアル構想も浮上
国土交通省は、新型コロナウイルスの感染拡大で旅客輸送が激減、経営が苦境に陥っているタクシー業界を救うため期間限定の特例措置として許可しているタクシーの飲食物有償配送に関し、夏場に弁当などが痛まないための保温・保冷設備導入を支援することを検討している。
現在もタクシーの貨物運送は物流事業者が少ない過疎地域に限って認められているが、申請してから許可を得るまで数カ月を要しており、参入の動きは広がっていなかった。特例措置を導入することで、タクシー業界に加えて同じく新型ウイルスの感染拡大で利用客が落ち込んでいる飲食店も支援するとともに、配送現場の人手不足をカバーしたいとの思惑もある。
国交省は当初、5月13日までを特例措置の期限と設定したが、タクシー事業者が多数申請し、利用者からも好評を得ているため、9月末まで延長した。国交省の一見勝之自動車局長は5月27日の衆議院国土交通委員会で、今後は特例措置ではなく恒久的に解禁することを視野に入れて協議していく考えを明らかにした。
許可を受けたタクシー事業者は既に1300を超え、地方自治体が配送に参入したタクシー事業者に助成する事例も相次いでいる。今後は夏場にかけて食中毒のリスクが高まるため、国交省としても何らかの形でタクシー事業者をサポートし、タクシーによる飲食物の有償配送がトラブルなく進められるよう後押ししたい考えだ。
一見局長は国会答弁で「補助の仕組みを考えていきたい」と明言しており、車載用の保温・保冷設備を導入する費用の一定割合を補助することなどが議論されているもようだ。併せて、こうした保温・保冷設備を実際にタクシーへ載せて効果を確認するトライアル配送を行う構想も浮上している。
(藤原秀行)