政府の「骨太の方針」原案で明示、年内に主要施策の行動計画策定も
政府は7月8日、首相官邸で経済財政諮問会議を開催し、2021年度予算編成の基本方針「経済財政運営と改革の基本方針2020(仮称)」(骨太の方針)の原案について議論した。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う社会変化に対応した「新たな日常」を実現するため、効率性重視の「just-in-time(ジャスト・イン・タイム)」だけではなく、リスクが顕在化した際に「just-in-case(ジャスト・イン・ケース)」の適切な対応も講じられるよう、生産拠点の国内回帰も含めたサプライチェーンの多元化を進めることを明記。併せて、物流の効率性・安全性向上をより積極的に進める方向性を鮮明にした。
サプライチェーン変革を含む「新たな世界秩序の下での活力ある日本経済の実現」に向け、柱となる主要施策について年内に実行計画を取りまとめることを盛り込んだ。同会議は7月中に骨太の方針を正式決定する予定。
安倍晋三首相は会議の席上、「今年の骨太方針は、新型コロナウイルス感染症の流行により世界的な時代の転換点にあって、この数年間で思い切った社会変革を実行していくか否かがわが国の未来を左右するとの切迫した危機感に基づいた原案となっている。わが国の未来に向けた新たな経済社会の姿として、新たな日常の確立を通じた質の高い経済社会の実現を目指していく」と語った。
首相官邸での経済財政諮問会議
会議で発言する安倍首相(いずれも首相官邸ホームページより引用)
デジタル化やAI、ロボット活用を明記
原案は、感染症拡大の影響で部材調達に支障を来して工場が一時稼働停止に追い込まれるなど、サプライチェーンの脆弱性が顕在化したと指摘。「生産拠点の集中度が高いものなどについて、国内外でサプライチェーンの多元化・強靭化を進める」と表明した。
さらに、価値観を共有する国々との物資融通のための経済安全保障に関するルール策定を進めることや、道路や港湾など生産性向上などに直結する社会資本を重点的に整備することを列記。加えて、航空や鉄道など必要な輸送能力の確保を図るとともに、「データ、新技術も活用した物流の効率性・安全性の向上に資する取り組みを加速する」と記した。
他にも、エネルギー・鉱物資源の安定供給確保や企業間連携を含む海事産業の競争力強化を官民挙げて推し進める姿勢を示した。また、社会全体をデジタル化するDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進へサプライチェーン全体でデジタル化やAI(人工知能)、ロボットの導入を図ることも明示した。
(藤原秀行)
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