年内竣工の6割程度が内定済みと分析、21年以降の需要には慎重な見方も・CBREリポート(前編)
※エリア別の動向を追加しました
シービーアールイー(CBRE)は8月13日、2020年第2四半期(4~6月)の全国の賃貸物流施設市場の動向に関するリポートを公表した。このうち首都圏は前編、近畿圏と中部圏は後編でそれぞれ概要を報告する。
首都圏の大規模なマルチテナント型物流施設の平均空室率は0・6%で、前期(20年1~3月)から0・1ポイントとわずかに上昇した。前期の水準から上がったのは5四半期ぶり。
ただ、水準自体は引き続き1%を下回っており、新型コロナウイルスの感染拡大下でも旺盛な需要が持続していることをうかがわせた。
4~6月期に新規供給された5棟のうち2棟は1棟借りで満床となるなど、引き続き大規模なニーズが見られる。3000坪以上の空室を抱えた物件は首都圏全体でわずか2棟にとどまっており、リポートは「テナントが竣工前の物件を検討する傾向に変わりはない」と指摘している。
1坪当たりの実質賃料は4390円で、前期比0・2%上昇した。リポートは「首都圏全域で既存空室が減少する中、今後の開発計画が少ない地域や、相対的に割安な物件の賃料が上昇する傾向が見られた」と分析している。
今後の展望では、向こう2四半期で予定されている新規竣工物件のうち、6割程度の面積が内定済みと推定。「年内は需給バランスに大きな変動はない」と予想する一方で、「新型コロナウイルスの感染拡大以前に内定したものも多いため、特に来年以降の需要については、今後の経済環境や企業業績の見通し次第で変化する可能性がある」と慎重な姿勢を示している。
首都圏の需給バランスの推移(CBREリポートより引用)※クリックで拡大
外環道は1年ぶり0・0%に低下
主要4エリアの動向は以下の通り。
【東京ベイエリア】
空室率は1・7%で、前期の2・3%から0・6ポイント低下した。空室は限定的で、大型案件の完成は来年まで待つ必要がある。CBREは「こうした状況の中、大手デベロッパーが中小型の都市型物流施設の開発を発表しており、需給が逼迫したマーケットに風穴を開けることになるか注目される」との見方を示している。坪当たりの実質賃料は7190円で前期から横ばいだった。
【外環道エリア】
新規に竣工した物件はなく、既存物件の空きスペースが全て消化され、空室率は2019年第2四半期(4~6月)以来の0.0%まで下がった。坪当たりの実質賃料は5080円で、前期比1・0%アップした。20年第4四半期(10~12月)で新規供給がなく空きスペースが枯渇することや、消費地に近い立地があらためて評価されていることから、賃料は上昇傾向が続いている。
【国道16号エリア】
空室率は前期から0・1ポイント低下し0・2%で、過去最低を更新した。需要は堅調で、今期の3棟を含めて直近3四半期に完成した9棟全てが竣工した期中に満床となった。逼迫した需給バランスを反映し、坪当たりの実質賃料は前期から0・5%アップの4370円。千葉県・東京都(三多摩地区)・神奈川県の広い地域にまたがって上昇傾向が見られた。CBREは「20年末までに竣工予定の物件は5棟あるが、リーシングは今のところ順調とみられる」と推定している。
【圏央道エリア】
空室率は前期比0・7ポイント上昇の1・3%。今期竣工した2棟がいずれも空室を残したことが影響したが、徐々に消化される見込み。この2棟を除けば空きスペースは合計4000坪程度しかなく、築1年以上の物件の空室率は0・4%と極めて低水準。需給の逼迫を背景に、坪当たりの実質賃料は前期比1・2%上がって3470円となった。特にこれまで賃料水準の低かった地域で、賃料の底上げが進んだ。CBREは「20年に竣工予定の物件では、それぞれリーシングが進んでいるようだ」とみている。
(藤原秀行)