JUIDA・鈴木理事長独占インタビュー(前編)
ドローン(無人飛行機)の産業利用促進に取り組む日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の鈴木真二理事長(東京大名誉教授、東京大未来ビジョン研究センター特任教授)はこのほど、ロジビズ・オンラインの単独インタビューに応じた。
鈴木理事長は、物流などの領域でドローンの利用を拡大する上で、機体の乗っ取りやウイルス感染などを防ぐセキュリティーの強化が重要と強調。JUIDAとしても政府や関係機関、民間企業などと連携してセキュリティーの重要性に対する認識を広めていくことに強い意欲を示した。インタビューの内容を前後編に分けて紹介する。
鈴木理事長(JUIDA提供)
機体乗っ取りなどに警戒を
――今年の通常国会ではドローンの所有者などの情報を登録する制度の創設などを盛り込んだ改正航空法と改正小型無人機等飛行禁止法が可決、成立しました。ドローンをより安全に、広い分野で活用できるようにする準備が着実に進んでいる印象を受けます。今後はどのような施策が展開されていきそうですか。
「2022年にいわゆるレベル4、有人地帯での目視外飛行を実現させるため、これまで個々のスクールが独自に出していたような技能証明を国のライセンスとして位置付けようということが、今年3月の官民協議会で発表されました。今、民間のドローン関係団体が一緒になって検討しており、JUIDAとしても国の免許としてどうあるべきかの議論を本格的に進めています。国のライセンスと設定するに当たり、何をスクールで教えるべきか、試験はどのように実施するのか、ライセンスの更新はどのような条件設定にするのか、国のライセンスにふさわしい教育制度をどう築いていくか、など検討すべき課題が数多くあります」
――東京オリンピック・パラリンピックは日本のドローンをアピールする絶好の機会でしたが、残念ながら延期になってしまいました。あらためて、どう臨まれますか。
「延期は非常に残念でした。例えばオリンピック・パラリンピックの競技会場を空撮したり、万が一の際にAED(除細動器)をドローンで迅速に届けたりすることを想定し、実際に準備も進めていました。まさに国内外に日本の高性能なドローンをアピールするチャンスでしたが、また来年の開催に向け、あらためて準備していきたいと思っています」
――ドローン利用促進という意味では、今年1月のJUIDA新年パーティーで、今年は「ドローンセキュリティー元年」にしていきたいと宣言されていました。その面での取り組みは進んでいますか。
「海外では既に取り組みが始まっていますが、日本でもようやくドローンのセキュリティーに関する意識が高まってきたように思います。落下や接触などの事故を起こさず安全に飛行することは当然ですが、ドローンで上空から撮影した画像や動画、機体の飛行履歴といったデータが不正に利用されないようきちんと管理していくことも大事です。さらに、ドローンは電波を使って操縦しますから、電波妨害や乗っ取りといった恐れがあります」
「今後はドローンがインターネットに接続して使われるようになることで、サイバーアタックを仕掛けられたり、マルウエアのようなウイルスに感染させられたりする危険性も出てきます。機体のメーカーやシステム提供者に加えて、パスワードを購入した際の初期設定のままではなく自分できちんと設定しなおすとか、ドローンを使う側も最低限の対策を講じなければならない段階に来ていると思います」
――セキュリティー意識はどういった形で広めていきますか。
「JUIDAが認定している、安全飛行に不可欠な操縦技能や知識を有した人材を養成するスクールでも、セキュリティーは自分自身で管理すべきだということをしっかりと受講者の方々にお伝えしていかなければいけないと感じます。趣味でドローンを使っていた時代から、既に業務で利用する時代になってきました。セキュリティーに関する何らかのガイドラインを作成するなど、環境を整備していかなければいけません。『セキュリティー元年』の言葉には、ドローンを使う側と作る側がともにセキュリティー対策を進めていく社会になってほしいとの思いを込めました」
「これから都市の上空をドローンが飛んで荷物を運ぶようになった時に、今以上に飛行の安全管理、安全確保に厳密に取り組まなければいけなくなります。ドローン認定スクールを通じて皆さんにセキュリティーや安全確保の意識が浸透していってほしいですね。セキュリティーに関してはまだまだこれからという感じではありますが、先ほどもお話しした通り、ドローンもいわばインターネットに接続したIoT(モノのインターネット)機器ですから、マルウエア対策などの重要性を訴え続けなければいけないでしょう」
今年9月にJUIDA主催で開いた国際展示会「JapanDrone2020」。新型コロナウイルス感染拡大の影響で例年より会期を短縮して開催したが、多くの人が訪れた※クリックで拡大
「ドローン物流の事業者免許」も検討必要
――ドローン物流は難易度が高いですが、ニーズは確実に存在しています。今後、実現に向けてクリアしていくべき喫緊の課題は何でしょうか。
「JUIDAとしてもドローン物流の実現には大変期待しています。現状はまだ各地で実証実験が行われている段階なので、データを蓄えて経験を積み、商用化につなげていきたいですね。1つ大事なこととして、ドローン物流を担う事業者の免許がどうあるべきかについても、これから考えていかなければなりません。米国では連邦航空局(FAA)が既にアマゾン・ドット・コムやウォルマートなどのグループにドローン配送サービスを認可しており、実際に事業を本格的に行える段階まで来ています。トラックや飛行機で荷物を運ぶ場合と同じく、どのような免許にすべきかを日本も真剣に議論していく必要があるでしょう。私からは以前、18年の年頭に今年は『ドローン物流元年』にしたいと申し上げましたが、その後、実際にかなり準備が進みました。その点に関しても、これまで各地で行われてきた実験の結果を役に立たせることができると思います」
――事業者の免許は新たに設けるイメージですか、それとも現行の免許に追加することを想定していますか。
「どちらがいいかは今後議論していかないといけないでしょう。まずは個人のライセンスを固めた上で、次は事業者の免許について検討を進めていく必要があると思います」
(藤原秀行)