車両を最適台数確保、物流コストの変動費化支援を想定
インターネットスーパーの立ち上げ支援を手掛けるスタートアップ企業の10X(テンエックス、東京都中央区東日本橋)は、顧客の小売・流通事業者の商品配送効率化を後押しする取り組みを強化する方針だ。注文数に応じて配送車両をより最適な台数だけ準備できるようサポート、物流コストを変動費化することを念頭に置いている。
10Xの支援サービス「Stailer(ステイラー)」で提供しているソフトウエアに、物流効率化の機能を追加することも視野に入れており、2021年以降に本格展開する見込みだ。ネットスーパーは円滑な配送も差別化する上で非常に重要な意味を持っているだけに、10Xは小売・流通事業者の不安を解消、よりネットスーパーへの新規参入のハードルを下げられるようにしたい考えだ。
ステイラーのアプリ(以下、いずれも10X提供・クリックで拡大)
イトーヨーカ堂が第1号でアプリ導入、50社以上から問い合わせ
10Xは2017年設立。自分に合った献立を考え出してくれるアプリ「タベリー」をリリースするなど、食品流通の分野に先進技術を持ち込み、デジタル化を促進することに主眼を置いている。
ステイラーは20年5月に提供を開始。小売・流通事業者が新たにシステムを開発しなくてもすぐにネットスーパーを立ち上げられるよう、消費者が手軽に使える購入用アプリをはじめ、顧客管理や在庫の把握、実店舗のスタッフへのピッキングする商品のリスト提示、決済など多岐にわたる業務を一括して提供するのが特徴だ。実店舗を展開していて新たにECへ参入したい事業者と、既存のネットスーパーシステムを刷新したい事業者の両方に対応している。
購入用アプリは最大で数万SKUにも及ぶ商品群の中から消費者が自分の欲しいものをすぐに見つけられるよう、徹底的に分かりやすいデザインにこだわっている。同時に、店舗や配送センターごとに分散している商品の情報を1つのデータベースに統合するなど、小売・流通事業者の目線も重視している。
こうした“食品流通DX(デジタルトランスフォーメーション)”に注力する姿勢が評価され、6月にはイトーヨーカ堂がステイラーを活用して新たにネットスーパーアプリの運用を開始した。既に大手スーパーなど50社以上から問い合わせが寄せられ、複数の企業で導入の準備が進められているという。年内には新たなサービスも投入する予定。
10Xは新型コロナウイルスの感染拡大の影響でECの利用が急拡大していることもあり、ステイラーの利用が着実に広がると予想。物流面での取り組みにより本腰を入れる。
同社はセイノーホールディングス傘下で食品宅配などを担っているココネット(東京都中央区日本橋人形町)と業務提携しており、ステイラーの導入を検討している企業にココネットの利用を提案。物流の足回り確保を支えている。
今後は、ステイラーの新たな機能として、注文を受けた商品をピッキングするのと併せて、商品の容積を測定し、オリコンが何個になるのかを自動的に算出。最適な輸送車両の台数をはじき出し、積載効率を高めることを検討している。
さらに、小売・流通事業者が利用する配送車両について、台数の準備は必要最低限のレベルに抑え、繁忙期で注文が膨れ上がった場合はその都度、オンデマンドで配送車両を手配できる仕組みに移行。配送コストを固定費から変動費へ変えることで、小売・流通事業者の負荷軽減を図ろうと準備を進めている。
10Xの矢本真丈代表取締役は「配送を効率化することで、受注の締め時間を遅くできるなど、ネットスーパーのユーザーの方々にもメリットは確実に大きい。オンデマンドの仕組みは来年以降、展開できるよう準備を着実に進めていきたい」とサービスレベル向上に強い意欲を示している。
(藤原秀行)