【独自取材】21年は災害時のドローン利用促進へ制度化・ルール整備目指す

【独自取材】21年は災害時のドローン利用促進へ制度化・ルール整備目指す

JUIDA・鈴木理事長新年インタビュー(後編)

ドローン(無人飛行機)の産業利用促進に取り組む日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の鈴木真二理事長(東京大名誉教授、東京大未来ビジョン研究センター特任教授)はこのほど、新年を迎えるに当たってロジビズ・オンラインの単独インタビューに応じた。

鈴木理事長は、ドローンを使った物流に関し、地方の小規模事業者の中に緊急輸送で使うことを想定する向きもあると説明。ドローン物流の機運が着実に広がることへの期待を表明した。加えて、2021年は災害時にドローンを物資輸送などに使うための制度化やルール整備に取り組みたいとの考えを強調した。

インタビューの後編を紹介する。


鈴木理事長(2020年撮影)

さまざまな場所で災害時に利用可能

――ドローン物流に関しては、大本の物流を担う物流業界は機運が盛り上がっていると感じますか。
「先進的に取り組もうとされている方々は非常にやる気満々です。ドローン物流のような新たな話は先陣を切って実現に向けて進まれる方が必要だと思いますので、ぜひ期待したいところです。最近聞いたところでは、大手企業は輸配送の大きなネットワークを既にお持ちですから、なかなかその中にドローンを組み込むのは難しいのですが、地方の小規模な物流事業者は機動性が高いので、緊急に運ぶ必要がある場合はドローンを用いようと考えておられる方も出てきているようです。宅配でウーバーイーツがお弁当などを運んでいるように、ドローン物流に関しても(既存の物流事業者とは別の)新しい担い手が始めていく可能性もあるのではないでしょうか」

――物流に関しても、時間はもう少しかかりそうですが、いろんな形でドローンの利用が広がりそうですね。
「今のドローンでは重い物を一度には運べませんから、どちらかといえば末端の、本当に人が届けるのが大変なところでドローンを使っていけるよう支援の体制を作っていくことも大事ではないかと思います」

――これまでにも話をされていた災害時のドローン利用ですが、具体的にどのように進めていくべきだと感じますか。
「災害時は特例でドローンを使える部分がありますので、その一環で物流事業者が物資などをドローンで運べるようにするというのも1つの手ではないかと思います。明日までに届けてほしいと言われているが道路が陥没して運べないといった時に、ドローンを使えるという特例を整備するのがいいかもしれません。バイクなどと併せて、ドローンも輸送手段の選択肢に入ってくるでしょう」
「ただ、困ったからドローンで運ぼうと思っても、やり方も決まっていない、どこに申請してどこの許可を得ればいいのかも決まっていないとなれば、災害が起きた時に動き出すまでに数日かかってしまいます。それではいざ使おうとした時にはもう不要になってしまうかもしれません。大きな災害が発生した際にドローンを物流に使う際、どういう手順で、誰がどういうふうにやるのかを明確にルールとして決めておく必要があります。逆に言えば、ルールを確立しておけば、いろんな場所でさまざまな災害に対応できます。先ほどもお話しした、大雪で高速道路上に車が滞留してしまった場合にもドローンを使えるでしょう」

「世界各国から日本のドローン活用が注目されている」

――政府が今年の通常国会に提出する航空法改正案は操縦の免許制度設立など、ドローン物流実現にも重要な制度整備が盛り込まれています。JUIDAも政府との意見調整などで関わってこられたと思いますが、法改正の方向性についてどのように感じますか。
「まずは大きな第一歩というところではないでしょうか。免許制度確立などでドローンの安全・安心な利用がさらに広がることが期待されます。ただ、ドローンはこれまで、既にさまざまなシーンで利用され、皆さん安全に運航されてきたという実績があります。今後、あまりにも厳しい規制を作ってしまうと、ドローンの普及にブレーキがかかってしまいかねません」
「これは有名な話ですが、英国でかつて蒸気自動車が使われ出した時に、安全を確保するため、運転している時には自動車の前を人間が歩いて先導し、赤い旗などを振って周囲に知らせることを義務付けた『赤旗法』という法律が施行されました。それは確かにそこまですれば事故を防げるとは思いますが、人が歩く速度でしか車が走れないということになりますから、自動車の普及を大きく妨げてしまい、そうした法律がなかったドイツやフランスに遅れをとる結果となりました。安全はもちろん第一に考えるべきものですが、利用促進とうまくバランスを取らなければいけないでしょう」

――仰る通り、安全性確保とドローン産業全体の振興を両輪で進めることが重要ですね。
「そういう意味では、セキュリティーが盤石で信頼性の高いドローンを日本のメーカーがきちんと製造し、故障や事故に対してもきちんと責任を持って対応していけるところには非常に期待したいですね。ぜひ大手メーカーなどもドローンの技術開発に参入していただきたいと思います。これは空飛ぶクルマに関しても同様ですね」

――毎年、新年には鈴木理事長自ら「今年はドローンの●●元年にしたい」と目標を発表されてきました。2021年は特にどんなところに力を入れていきたいですか。
「元年については、どのような表現にするかはまだ考えていません(笑)。1月にオンラインでJUIDAの事業方針などを発表する機会がありますので、そこで正式にお伝えしたいと思います。2021年については、これまでにもお話をさせていただいた通り、やはり災害時のドローン利用をきちんと制度化、ルール化していくことが大事だと思っています。災害に直面される地方自治体の方々とそうしたものを作り上げていくことで、災害時の物流などへのドローン本格活用実現に向け、第一歩を踏み出せればいいですね。昨年開催した大型展示会『Japan Drone(ジャパンドローン)』でも、参加された地方自治体の方々が災害時のドローン利用はさまざまな関係者と話をしながら進めていく必要があるとおっしゃっていました。いろいろなご相談も頂戴しているので、JUIDAとしてしっかり取り組みたいですね」
「また、これまでにもお話ししましたが、ISO(国際標準化機構)の中で、ドローン専用の着陸設備『ドローンポート』やドローンの安全飛行に関するトレーニングなどの面で日本が標準化の議論をリードしていけるよう、引き続き注力していきます」

――海外とのドローン関連団体などとの連携も強化されますか。
「昨年11月時点で20カ国の30団体とMOU(協力協定)を締結し、お互いに情報交換しています。最近では、例えばインドからも、ドローンの活用状況に関する問い合わせが寄せられたりしました。世界各国から日本のドローン活用のやり方が注目されているところがありますから、国際的な連携は今度とも続けていきたいですね。早く新型コロナウイルスの感染が沈静化して、6月開催予定の次回のジャパンドローン展に海外から数多くの方が来ていただけるようになることを望んでいます」


20年の年始パーティーで「セキュリティー元年」と目標を発表した鈴木理事長。21年は?

(藤原秀行)

テクノロジー/製品カテゴリの最新記事