公取委と経産省が作成、大企業に有利な片務的NDAなどは独禁法違反の恐れと警告
公正取引委員会と経済産業省は3月29日、スタートアップ企業と共同で事業を進める際に留意すべき点をまとめた「スタートアップとの事業連携に関する指針」を公表した。
公取委が2019年から実施してきたアンケート調査結果で、スタートアップ企業が大企業と取引したり、ベンチャーキャピタルから出資を受けたりする際、不当な要求をされるケースが相次ぎ見られたことなどを重視。指針に法的拘束力はないが、独占禁止法に抵触しないよう適正な取引や関係構築の在り方を明示し、大企業などをけん制している。
指針はNDA(秘密保持契約書)について、大企業に有利な片務的内容の場合は独禁法で禁じる優越的地位の乱用に該当する恐れがあると指摘。「双方が秘密保持義務を負う双務型のNDAを締結することで両者のコアコンピタンス(競争力の源泉)が守られるのが望ましい」と強調した。
また、PoC(技術検証)契約に関し、スタートアップ企業が無償作業を強いられるなどの行為も望ましくないと明言。契約を結ぶ際、PoCの目的や終了要件を明確にしておくことなどを求めている。
他にも、共同研究と銘打ちながらも実際にはスタートアップ企業の負荷が大きい“名ばかり共同研究”になっていたり、スタートアップ企業が知的財産権のライセンスを無償提供するよう要請されたりするなどの事例にも言及。いずれも独禁法上は問題になる可能性があると強く警告している。
(藤原秀行)