21年度政策要望で議論、7月めどに正式決定
主要な不動産会社など150社超で構成する業界団体の不動産協会は、物流施設の開発に関連し、自動化・機械化や防災機能向上を促進するための環境整備支援を引き続き、国に働き掛けていく方針だ。
主な物流施設デベロッパー17社が参加している専門組織「物流事業委員会」を軸に、2021年度の政策要望の内容を議論。7月をめどに正式決定する見通し。同協会は20年度、国に提出した不動産領域の政策要望の中で、免震機能を持つ倉庫の普及や庫内作業の機械化・自動化への支援措置創設など5項目を物流政策として盛り込んだ。21年度についても、この5項目をベースに、要望の内容を固めていく見込みだ。環境への配慮についても検討課題となりそうだ。
自動倉庫の容積率参入要件緩和など焦点に
物流事業委員会は18年、同協会が新設した。プロロジスの山田御酒社長が委員長を務めている。物流施設デベロッパーによる初めての業界団体的な存在と位置付けられている。
活動の目的は「物流施設開発事業を行うに際し、不動産業としての課題の整理および解決の方向性を明確にし、国土交通省関係部局などに改善などを働き掛ける」ことと設定。目指すべき物流施設の姿は「人・環境・社会にやさしい物流不動産」を掲げている。
政策要望は毎年、税制改正や都市政策、住宅政策などについて言及。20年度は初めて「物流政策」と独立した項目を設けた。この中で、社会インフラとなっている物流施設の整備促進が重要であり、荷物の取扱量急増への対応のため物流施設の大型化や効率化の早期対応が必要との認識を示している。
その上で、免震倉庫の普及に関する支援措置、庫内作業効率化(機械化・自動化など)への支援装置の創設を提言。さらに、自動倉庫の容積率参入基準の要件緩和、湾岸地区の倉庫集約化に関する現行制度の要件緩和と新制度創設、電気室などを地上階に設置する場合の容積率緩和も列挙した。
規制の見直しにより、自動倉庫などの機械設備をより導入しやすくするとともに、防災対応を後押しできるようにすることを念頭に置いている。老朽化が指摘されている東京湾岸エリアの倉庫の更新を図る狙いもある。21年度の政策要望でも、こうした点を踏まえて、事業委員会の会員各社の担当者が参加しているワーキンググループで細かい内容の詰めを進めている。
物流施設デベロッパーの間でも、大和ハウス工業が都市部に加えて地方でも積極的に優良案件の開発を進め、雇用創出などの面で地域創生の貢献に注力する姿勢を打ち出すとともに地方自治体と防災時の連携協定を相次ぎ締結したり、三井不動産が千葉県船橋市で開発中の物流施設で先進的なオートメーション倉庫を導入する方針を示したり、東京建物が東京ガスと組み、物流施設への再生可能エネルギー導入促進を図る計画を発表したりと、環境や防災への対応を強化する動きが広がっている。
不動産協会の事務局は「SDGs(持続可能な開発目標)が重視される中、物流施設が果たすべき役割はますます重要になってきている。人・環境・社会に配慮した施設を整備するという基本は変えず、引き続き議論を進めていく」と説明。日本物流団体連合会(物流連)や日本3PL協会、日本倉庫協会などの物流関係の業界団体などとも必要に応じて意見交換や関係強化を進めていく方針だ。
(藤原秀行)