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【独自取材】短期集中連載・物流施設デベロッパー21社の戦略(第3回)

【独自取材】短期集中連載・物流施設デベロッパー21社の戦略(第3回)

東急不動産、東京建物、住友商事、センターポイント・ディベロップメント

2021年は早くも上半期の終わりに差し掛かり、年末に向け折り返し地点を過ぎようとしている。新型コロナウイルスの感染拡大で社会が大混乱する中でも、先進的な機能を持つ物流施設の需要が減速する兆しは見えず、新規の開発プロジェクトが続々と公表されている。

ロジビズ・オンラインは新たな特別企画として、主要な物流施設デベロッパー21社をメーンに、これまでの開発の軌跡と今後注目されるポイントについて、各社の公表事例やロジビズ・オンラインの独自取材などのデータを基に紹介する。

第3回は東急不動産、東京建物、住友商事、センターポイント・ディベロップメント(CPD)の4社に焦点を当てる。

東急不動産
――価値向上へ独自施策を相次ぎ展開

総合不動産大手の東急不動産は、大和ハウス工業やセンターポイント・ディベロップメント(CDP)との共同案件を含め、物流施設の開発を着実に進めている。自社ブランド「LOGI’Q(ロジック)」の案件が初めて竣工したのは2019年。当初から物流施設の価値向上へ独自の施策を講じている姿勢が目立つ。

例えば、昨年1月に埼玉県三芳町で完成したアスクル専用の物流施設「LOGI’Q三芳」は東急グループの東急ハンズと連携し、屋上テラスや遊歩道を整備。東急スポーツオアシスと連携して公園を造ったり、ビクターエンタテインメントが提供している音響空間サービス「KooNe(クーネ)」を導入し、ハイレゾ音源を用いて心地良くなれる空間の創出に努めたりと、非常にユニークな施設だ。

他にも、NTT東日本やPALと組み、次世代の高速通信規格「5G」を活用して物流施設の庫内作業を効率化・省人化する「スマート倉庫」の実現に動いている。高精細カメラを使って庫内の作業スタッフを撮影、動線を把握して現場レイアウトや人員配置の最適化につなげることなどを検討している。

先ごろ東京都江東区東砂で着工した「LOGI’Q南砂町」は、世界最大級の認証機関SGSグループの日本法人SGSジャパン(横浜市)が建築図面などを基に、完成前の工場や物流施設などが必要なセキュリティ対策を講じていると認める「SGS施設セキュリティ認証竣工前評価登録」を国内で初めて取得した。東急グループの経営リソースも活用しながら、今後も物流施設の価値を高めるための「トライアンド・エラー」が続きそうだ。


「LOGI’Q南砂町」の完成イメージ(東急不動産提供)

東京建物
――「ネット・ゼロ・エネルギー」が基本

オフィスビルやマンションなどに強い東京建物は、2018年に物流施設開発事業へ参入した。埼玉県久喜市で自社開発の第1号物件「T-LOGI(ティーロジ)久喜」が満床稼働したほか、既に首都圏や関西圏、中京圏の10カ所以上でプロジェクトを進行中。総合不動産で築いた開発用地取得の経験を活用し、事業拡大のスピードを上げている。

年間500億円程度の物流施設開発を進めることを視野に入れ、4大都市圏を中心に全国で優良な開発用地の取得を図っている。

当初から鮮明に打ち出しているのが、不動産事業の持続可能性を高めるため、温室効果ガス排出削減などの環境対策を徹底していく姿勢だ。「T-LOGI久喜」は東京ガスと組み、設置した太陽光パネルで生み出した電力のうち余剰分を、東京建物が群馬県伊勢崎市で展開している大型商業施設「スマーク伊勢崎」に送電する「自己託送制度」を継続して展開していく方針だ。今後開発する別の施設でも同様の仕組みを取り入れることを検討している。

東京建物は6月、30年度までに原則として全ての新築オフィスビル・物流施設・分譲マンションは、建物で消費する年間の1次エネルギーの収支をゼロにする「ZEB」(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)や「ZEH」(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)として開発する方針を表明。30年度までに原則として開発する全ての新築オフィスビル・物流施設で環境性能を最大限高めるよう設計している建築物と認める各種の「グリーンビルディング認証」を取得することも打ち出している。同社の物流施設が再生可能エネルギー利用など、環境対策の先駆的な実験の場としても機能していくことが見込まれる。


神奈川県綾瀬市で22年7月完成予定の「(仮称)T-LOGI綾瀬」の完成イメージ(東京建物提供)

住友商事
――消費地近接の「都市型」を前面に

もともと祖業が不動産の住友商事は、オフィスビル、商業施設、分譲マンションの伝統的なアセットの開発にこだわりを持っている。3本柱に続く不動産事業の「第4の柱」として物流施設を位置付け、用地取得や物件管理などのノウハウを生かして事業展開を加速。共同事業を含めて開発を手掛ける物流施設の総延べ床面積は約100万平方メートル超、資産規模は投資先のファンド保有分も合算して2600億円超に上る。

「SOSiLA(ソシラ)」ブランドの自社開発案件で特に志向しているのが、消費地に近接した都市型の物流施設だ。eコマースの市場成長に伴い、迅速に出荷できる物流施設の重要性がますます高まっているのに対応している。5月末には大阪市の中心部・福島区で「SOSiLA大阪」が完成。7月には大阪、神戸という巨大消費地を視野に入れられる兵庫県尼崎市で「SOSiLA尼崎」が竣工する予定だ。前者は段ボール大手のレンゴー、後者は日本通運の入居が決まるなど、需要を掘り起こしている。

首都圏でも埼玉県八潮市、神奈川県大和市、千葉県柏市で続々と完成する見通し。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う生活様式の変化で今後もECの伸びが続くと見込まれるだけに、都市型案件は差別化の大きなポイントになりそうだ。高騰する用地への対応などが課題になる。

併せて、やはりニーズが拡大している冷凍・冷蔵倉庫への対応にも本腰を入れていく構えだ。多様な業界と関係を構築している大手商社の強みをテナント企業のマッチングなどに生かしていこうと模索を続けている。


SOSiLA尼崎の完成イメージ(住友商事提供)

センターポイント・ディベロップメント(CPD)
――「手間惜しまない」開発を継続

センターポイント・ディベロップメント(CPD)は2011年、米系不動産サービス大手ラサール インベストメント マネージメントなど不動産業界出身者らが集結し、物流施設の開発・運用に特化した投資助言会社として立ち上げた。社名は自分たちが手掛ける物流施設が社会インフラの結節点(センターポイント)となるような、意義あるプロジェクト(デベロップメント)を進める方針を表現している。

その背景には、プロジェクトを進めるに当たって、開発期間や投資規模などに関し、業界の常識に必ずしもとらわれず、より柔軟にプロジェクトを進めていきたいとの思いが込められている。17年には兵庫県尼崎市にあったパナソニックのプラズマパネル工場建屋を改修した大型物流センターを無事完成させ、不動産業界などで注目を集める存在となった。

他にも大手メーカー工場と用地をアパレルやeコマース向けの物流施設に刷新するなど、開発の難易度が高めな案件でも優良な物流施設を生み出せると確信できれば、地元自治体や地権者といった関係者らとの調整など、手間を惜しまず前向きに取り組んでいる。18年には三菱UFJリース(現三菱HCキャピタル)がCPDに約33%を出資、持ち分法適用会社となったが、そうした基本姿勢に大きな変化は見られない。

今年1月には、神戸市北区で物流施設2棟、延べ床面積が合計で約30万平方メートルの大型案件「CPD西宮北」に着手することを公表した。完成は25年春の見通し。新築だけでなく、既存物件の取得・改修も引き続き意欲を見せている。


「CPD西宮北」の完成イメージ(CPD提供)

(藤原秀行)

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