【独自取材】短期集中連載・物流施設デベロッパー21社の戦略(第5回)

【独自取材】短期集中連載・物流施設デベロッパー21社の戦略(第5回)

グッドマンジャパン、メープルツリーインベストメンツジャパン、清水建設、第一生命保険、三井物産都市開発

2021年は早くも下半期に突入、年末に向け折り返し地点を過ぎた。新型コロナウイルスの感染拡大で社会が大混乱する中でも、先進的な機能を持つ物流施設の需要が減速する兆しは見えず、新規の開発プロジェクトが続々と公表されている。

ロジビズ・オンラインは新たな特別企画として、主要な物流施設デベロッパー21社をメーンに、これまでの開発の軌跡と今後注目されるポイントについて、各社の公表事例やロジビズ・オンラインの独自取材などのデータを基に紹介する。

第5回はグッドマンジャパン、メープルツリーインベストメンツジャパン、清水建設、第一生命保険、三井物産都市開発の5社にスポットを当てたい。

グッドマンジャパン
――千葉・印西の巨大開発が好調、年内に5棟目竣工へ

日本での物流施設開発を先駆的に進めてきたグッドマンジャパンの名前が一段と注目されるようになった契機とも言えるプロジェクトが、千葉県印西市の「グッドマンビジネスパーク」だ。これまでに大型物流施設4棟が完成、賃貸面積は合計で約51万6000平方メートルに上る。既に国内・外資系の有力企業が入居、4棟とも100%稼働している。5棟目の「ステージ5」も10月をめどに竣工する見通しだ。

グッドマンビジネスパークの敷地中心部には「リラックス&アクティブ」をテーマに掲げた空間「theGreen」を設け、緑地スペースやカフェ、レストラン、託児所、フィットネスジム、スパ、小売店舗などを展開。物流施設の従業員や近隣住民が気軽に使える環境を生み出している。まさに地域地全体が1つの街を構成している。大手デベロッパーが1つのエリアで物流施設を集中的に建設する大型プロジェクトが相次ぎ登場しているが、グッドマンビジネスパークはその先駆けとして評価されそうだ。

同社の開発スタンスは数を追わず、優良案件に絞り込む「厳選投資」。新型コロナウイルス感染拡大で経済情勢は厳しいものの、EC需要増加による先進的物流施設へのニーズは途切れないとみて、引き続き首都圏だけでなく、関西エリアでも開発を模索していく方針だ。物流適地として需要が伸びる内陸部の大阪府高槻市では新たな物流施設「グッドマン高槻」を展開、22年夏ごろの竣工を目指している。


グッドマンビジネスパークの「ステージ5」完成イメージ(グッドマンジャパン資料より引用)

メープルツリーインベストメンツジャパン
――地方エリアでも事業機会発掘、九州最大案件を進行

メープルツリーインベストメンツジャパンは、3大都市圏に加え、地方エリアでも事業機会を発掘しようと目配りを続けている。2019年には神戸市内で延べ床面積が約10万2000平方メートルの「メープルツリー神戸ロジスティクスセンター」が完成。20年11月には、福岡県筑紫野市で大型物流施設を2棟、総延べ床面積が約23万1648平方メートルの大型案件に着手する方針を公表した。「メープルツリー筑紫野ロジスティクスセンター」は九州で最大規模の案件となる見込みだ。

広島では昨年12月、メープルツリーグループでシンガポール初のアジアを対象とした物流施設専門の上場リート、メープルツリーロジスティクストラスト(MLT)が、東広島市の地上2階建て、延べ床面積約2万7000平方メートルの物流施設を取得した。

首都圏や関西圏で物流施設用地の取得が一段と難しくなる中、事業のスコープを地方の有力都市圏にも広げており、今後も開発計画が続く可能性が大きそうだ。マルチテナント型がメーンの投資対象だが、BTS型にも強い意欲を見せている。


「メープルツリー筑紫野ロジスティクスセンター」の完成イメージ(メープルツリー提供)

清水建設
――「可変性と汎用性」重視、火災早期発見システムなど技術力アピール

清水建設は大手ゼネコンとして物流施設の建設を日常的に受注しているのに加え、不動産投資開発事業の一環として、物流施設を自社で開発している。業界でも異例のスタンスだが、これまでに首都圏で計7棟、総延べ床面積が約30万平方メートルの実績を積み重ねてきた。

アピールポイントとしているのが、ゼネコンで培った高い設計・施工技術。「可変性」や「汎用性」を重視し、テナント企業の多様なニーズに応えていく姿勢を標ぼうしている。建物自体のスペックに加え、近年物流施設で大規模な火災が相次いでいるのを踏まえ、AIを活用して早期に火災を検知、確実な初期消火を後押しするシステムを実用化するなど、独自の切り口で差別化を図っている。

このたび、新たなエリアとして九州で初の案件「S.LOGi(エスロジ)福岡空港」の開発に着手。西日本鉄道の国際物流事業本部が1棟借りし、半導体関連や農作物などの輸出入拠点として運営していくことが確定している。関西圏でも本格的な開発プロジェクトを進行中。4大都市圏を着実にカバーしていく姿勢を見せている。


「S.LOGi福岡空港」の完成イメージ(清水建設提供)

第一生命保険
――まず既存案件への投資でスタート、新規開発にも意欲

国内生命保険大手の第一生命保険は、生保資金運用の一環として展開している不動産投資で、2017年に物流施設への投資をスタート。第1号はオリックス不動産投資顧問が運用する不動産投資ファンドを介し、千葉県市川市の既存施設「市川塩浜ロジスティクスセンター」に約68億円を投じた。

2件目は19年に丸紅アセットマネジメントが運用する不動産投資ファンドを通じて、埼玉県川越市で地上3階建て、延べ床面積が約3万2000平方メートルの物流施設「LOGIPLACE-D Kawagoe」開発事業に参画。第一生命保険としては初の新規開発案件で、今年1月に竣工した。3PL運営企業が1棟借りしており、第1号案件に続いて幸先の良いスタートとなっている。敷地内には危険物倉庫を備えるなど、昨今のニーズを踏まえた案件だ。

今後も案件を精査しながら物流投資を継続するスタンスを見せている。これまでは有力な投資運用会社などと組むスタイルが主流だが、今後は自社がメーンとなり、独自ブランドで開発に乗り出すかどうかが焦点となりそうだ。


「LOGIPLACE-D Kawagoe」の外観(第一生命保険プレスリリースより引用)

三井物産都市開発
――「1~2テナント利用」規模感の物件メーン、シンガポールのキャピタランドとも連携

商社系デベロッパーの一翼を担い、「LOGIBASE(ロジベース)」の独自ブランドで物流施設開発を継続。用地取得や開発に際しては、三井物産グループで手掛けている物流の経験やノウハウ、顧客ネットワークも最大限生かしている。

昨年秋には埼玉県狭山市で「LOGIBASE新狭山」(延べ床面積1万790平方メートル)、今年2月には関西内陸部の物流適地として注目度が高まっている京都府久御山町で「LOGIBASE久御山」(2万2379平方メートル)と完成が相次いだ。後者はJPトールロジスティクスが1棟借りするなど、需要は旺盛。

三井物産都市開発は「1~2テナントで利用可能な規模感」の開発をメーンに据えており、4大都市圏を軸に中堅・中小規模の案件が続きそうだ。

新たな動きとして、シンガポールの不動産大手キャピタランドが日本で物流施設開発に参入するに当たって三井物産都市開発と連携している。既に首都圏と関西圏で開発計画を公表済みだ。キャピタランドは用地取得などの面で三井物産都市開発に大きな期待を寄せており、共同開発案件も出てきそうだ。


「LOGIBASE久御山」(三井物産都市開発プレスリリースより引用)

(藤原秀行)

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