30年ごろの実装念頭に、年間100万トン規模実現目指す
伊藤忠商事は6月22日、日本CCS調査(JCCS)、一般財団法人エンジニアリング協会(ENAA)、日本製鉄と共同で、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した事業「CCUS研究開発・実証関連事業/苫小牧におけるCCUS大規模実証試験/CO2輸送に関する実証試験」に応募、採択されたと発表した。
CCUSは「Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage」の略で、CO2を資源として有効利用したり、地下へ貯留したりすることでCO2排出量の削減にも寄与すると見込まれる技術。
政府が2019年6月に閣議決定した「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」は、化石燃料の利用に伴うCO2の排出を大幅に低減していくための手段としてCCUS/カーボンリサイクルの役割の重要性を明記する一方、その社会実装に際してCO2排出源と貯留地が離れていることによるCO2の輸送の課題を指摘。「官民の取り組みとしてCO2を安全にかつ低コストで輸送するための適切な事業設計を行い、民間事業者が投資判断を行うことができるような状況を作り出す必要がある」と問題提起している。
また、経済産業省が関係省庁と連携して20年12月に策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では、脱炭素社会を実現する技術開発や社会実装に取り組むことは、気候変動問題の解決に向け極めて重要であるとの前提で、CO2削減(ビヨンド・ゼロ)を可能とする革新的技術を50年までに確立することを目指している。
同実証プロジェクトは、30年ごろにCCUSを社会実装することを念頭に、年間100万トン規模のCO2の供給地点から利用・貯留地点への長距離・大量輸送と低コスト化につながる輸送技術の研究開発を行うとともに、実証試験や関連調査を通じ、液化CO2の船舶輸送技術の確立を目指す。具体的には、次の研究開発・実証試験・調査に取り組む。
※以下、リリースより引用(一部、編集部で修正)
(1)CO2の船舶輸送技術を確立するための研究開発(JCCS、ENAA)
CO2大量輸送実現の鍵となる、液化CO2を貯蔵・輸送するための技術確立を目指す。特に、液化CO2のドライアイス化の制御を含む安全性の確保が研究開発上の重要課題となる。
また、船舶の基本設計、国際的なルール形成への参画など、液化CO2船舶輸送の社会実装に向けた準備も進める。
(2)年間1万トン規模のCO2船舶輸送の実証試験(JCCS、ENAA)
(1)を通じ整理された技術課題を実証試験で確認するため、液化CO2を1000トン程度輸送できる実証船を手配し、年間10航海程度運航する。
また、実証試験用の陸上設備として、出荷基地は舞鶴(関西電力発電所敷地内)に、受入基地は苫小牧にそれぞれ設営を予定している。
(3)CCUSを目的とした船舶輸送の事業性調査(伊藤忠商事、日本製鉄)
CO2回収・輸送事業の実現に向けて、製鉄業を含む国内の様々な多量排出源からのCO2輸送に係るビジネスモデルの検討を実施する。
なお、特定の課題については再委託先の商船三井、川崎汽船、日本ガスライン、お茶の水女子大などと共に研究開発を行う。
(ロジビズ・オンライン編集部)