アクセンチュアがグローバル意識調査基に日本企業へ提言
アクセンチュアは12月5日、日本を含む世界10カ国を対象に実施した、主要企業のCFO(最高財務責任者)意識調査結果に関するメディア向け説明会を東京都内で開いた。
同社担当者は調査結果を踏まえ、グローバルでCFOが企業の経理や財務管理にとどまらず、事業のデジタル化による成長促進といった重要戦略の牽引役へと役割が高度化しているのに対し、日本は追随できていないと指摘。旧来の“金庫番”的な存在から、企業価値を創出するプロデューサーとしての役割を担えるよう、企業内の体制を整備していくことを提案した。
調査は2017年12月~18年4月、売上高が10億ドル以上のグローバル企業の財務リーダー741人を対象に実施。金融や消費財、保険、小売りなど多様な業種をカバーした。日本企業からは81人が協力した。
日本は「デジタルを用いた事業への貢献意識低い」
「伝統的な経理財務部門の業務をどれだけテクノロジーで自動化できたか」との設問に対し、できたと回答した割合は日本が83%で、上位のイタリア(92%)や米国(92%)、フランス(91%)などを下回り、グローバル平均の87%にも届かなかった。
日本は他の項目についても、「事業管理の高度化」は48%(グローバル平均62%)、「事業のデジタル化牽引」は58%(同81%)にとどまった。
アクセンチュア・ストラテジー戦略コンサルティング本部の山路篤財務・経営管理グループ統括マネジング・ディレクターはこうした結果から「デジタルを用いた事業への貢献意識が低く、かつ他部署からも事業貢献に対する期待が低い状態」と分析。高精度な財務諸表作成やコンプライアンス担保、投資リスクの指摘といった“金庫番型CFO”に陥っていると懸念を示した。
経営課題解決のスキル獲得可能なキャリアパス整備
一方、「CFOが全社のデータを管理・活用できるか」との問いに対し、日本で肯定したのは47%で、10カ国中最低。グローバル平均の75%を大きく割り込み、9位のドイツから16ポイントも離された。
「不足するスキルを補うために、経理・財務の人材要件を早々に根本から変える予定」があるかどうかとの質問には日本が60%で、10カ国中唯一の6割台にとどまった。こちらもグローバル平均の78%との差が際立った。
アクセンチュア・コンサルティング通信・メディア・ハイテク本部の高塚大然財務・経営管理グループ統括マネジング・ディレクターは、“企業価値創出プロデューサー型CFO”へ変貌を遂げるためには
①分析を可能とする標準化されたデータと分析軸
②ビジネスの意思決定に資する事業貢献スキル
――が必要と指摘。
①は新規と既存の事業それぞれに最適なKPI(重要業績評価指標)を設定して環境変化へ適応できるようにすることなどをアドバイス。②はさまざまな経営課題を解決していくスキルの獲得を主眼としたキャリアパスの設計などをそれぞれ提案した。
その上で「これからのCFOは、積極的に変革を推し進め、財務数値だけでなく社内外のデータを活用した未来志向のKPIを設定し、事業部とともに企業価値を創出していくことが求められる」とエールを送った。
(藤原秀行)
説明会に臨む(左から)山路氏と高塚氏