【独自取材】大和ハウス工業、郊外型住宅団地再生や地方公設卸売市場再整備と物流施設の組み合わせを検討

【独自取材】大和ハウス工業、郊外型住宅団地再生や地方公設卸売市場再整備と物流施設の組み合わせを検討

地方創生への貢献重視

大和ハウス工業は、物流施設開発を進める上で、地方創生への貢献を重視している。

同社が全国で開発を進めてきた郊外型戸建て住宅団地の再生事業や、同社が参画する地方の公設卸売市場の再整備支援事業に物流施設を組み合わせ、地域の雇用創出や経済活性化、土地の有効活用につなげることを目指している。

同社はもともと、物流施設開発に関しては全国で70超配置している営業拠点を通じて、都市部に限らず地方エリアでも積極的に用地を取得してきた。そうしたノウハウを生かし、人口減少や高齢化に悩む地方の課題解決をサポートして自社の物流施設開発事業の成長と地方振興を両立させていきたい考えだ。

同社で物流施設開発の陣頭指揮を執る浦川竜哉取締役常務執行役員建築事業本部長は「人々の生命と財産を守り、街の再生の核になるような物流施設を手掛けていきたい。今後は最初から住宅地と物流施設を連携させて開発することも増えていくのではないか」と話している。

“住宅地密接型”も視野

大和ハウスは1960年代から「ネオポリス」と呼ぶ郊外型戸建て住宅団地を全国で60カ所以上、延べ6万区画以上開発してきた。高度経済成長期に自分の家を持ちたいという世帯の要望に応えてきたが、住宅の多くは開発から半世紀程度が経ち、少子高齢化に伴う“買い物難民”の発生、空き家の増加、地域住民間のつながりの希薄化といった課題を抱えている。

ネオポリスは「都市部近郊の住環境が整ったベッドタウン」という特徴が消費者に受け入れられてきたが、同社は働き方の多様化で都市部近郊のベッドタウンということ自体、かつてほど消費者への強い訴求ポイントにはなっていない現状を考慮。全国で既存の住宅団地を新たな街に再生して魅力を高めていくプロジェクトを本格的に展開している。

例えば、横浜市の「上郷ネオポリス」ではコンビニエンスストアを併設したコミュニティー拠点をネオポリス内に導入し、住民が集まって食事をしたり、イベントを開いたりできる場として運営。兵庫県三木市の「緑が丘ネオポリス」は新規に雇用を生み出そうと胡蝶蘭の栽培施設を新設した。

他のネオポリスでも、地域の特性を踏まえた上で適切な地域振興策を探っていく構え。その一環として、住宅地に密着した物流施設を構え、新たな雇用を確保して住宅団地に再び人を呼べるようにすることを視野に入れている。消費地に近い都市近郊に物流施設を設置することで、多品種を高頻度で迅速に配送する必要があるeコマース事業者の需要に応えていきたいとの狙いもある。


「上郷ネオポリス」の変化(大和ハウス工業ウェブサイトより引用)

大和ハウスは他にも、グループの大和リースなどと連携し、都道府県が認可している地方の公設卸売市場再整備を後押しするプロジェクト「Dマーケット」にも乗り出している。地方の公設卸売市場は各地で老朽化が進み、人口減少の影響で取扱量が減少、厳しい経営環境にある中、民間の力を借りて建て替えなどを進めるケースが増えている。

大和ハウスも本格的に参入、今年4月には富山市が、同市の公設地方卸売市場の再整備事業で大和ハウスなどの企業連合が優先交渉権を得たと発表した。大和ハウスはDマーケットの第1号案件と位置付けており、市場の建物と設備を刷新するのと併せて、スーパーやホームセンターなどを誘致、「街に開かれた生活市場」の実現を図る構想を進めている。

今後のDマーケットは市場再整備に伴って空いたスペースに物流施設を開発、公設卸売市場自体の機能を高めることも念頭に置いている。大和ハウスは冷凍・冷蔵機能を持つ物流施設の開発実績もあるため、コールドチェーンへの対応にも優位性を発揮できるとみている。

浦川氏は「市場を時代の要請に合ったサイズに再整備し、活性化していくDプロジェクトのように、物流施設で産業構造の転換に貢献していきたい」と意気込んでいる。

大和ハウスはこれまでにも、物流施設内に託児施設を設け、子育て中の人が安心して働けるようにするなど、地域に配慮した取り組みを続けてきた。物流施設開発への新規参入が相次ぎ、開発用地の取得も難しくなってきているだけに、同社は全国に営業拠点を構えていることなどを生かし、地域にも歓迎される付加価値を備えた物流施設を実現していきたい考えだ。

(藤原秀行)

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