自動化への関心高める荷主と暗中模索が続く3PLプレーヤー
ロジビズ・オンラインが複数の3PLプレーヤーにヒアリングしたところ、ここに来て荷主企業から自動化・機械化の意識や投資計画について問われることが増えているようだ。
一部の荷主企業が人手不足に伴う物流現場の業務遂行力、サプライチェーンの効率性低下に警戒感を持ち始めたとみられ、物流企業の取り組みや現状認識について情報収集を本格化させていることがうかがえる。
ただ、物流現場では今のところ自動化に関しては総じて暗中模索の段階にあり、手応えを感じているのは少数派。関係者からは荷主企業の要望に対応できる成果がないことに焦りの声も聞かれる。3PLプレーヤーにとって2019年は厳しい年となりそうだ。
大手物流企業関係者は「今のところ自動化設備の有無が入札要件となっているわけではなく、プロポーザルの評価を左右するほどの影響力も感じられない。ただ自動化に関する質問が急に増えてきたことは、新たな傾向として今後も注視する必要があるだろう」と語り、対応策として一部拠点で実機によるトライアルを進めていることを明らかにした。別の大手物流企業でも今年から無人搬送車(AGV)をテスト導入したほか、小規模な資機材を手配しているケースも散見された。
しかし、いずれの物流企業も「現状では自動化設備よりも人間の方が作業は早くて正確。試験導入という点を割り引いても効率化などで成果は出ていない」と回答。人間と自動化設備の共存、導入に伴うシステム刷新やオペレーションの見直しなどについて苦慮・模索していることが見て取れる。
荷主とは歴史・実績・認識面で相当のギャップを指摘する声も
ある物流業界関係者はメーカーをはじめとする荷主企業と物流企業では、自動化・機械化の実績・ノウハウで圧倒的な開きがあること強調する。「例えば自動車メーカーは1980年代から溶接、搬送、塗装などでFA機器を導入・運用してきた。ここで蓄積されたノウハウは生産性向上だけでなく、FA機器メーカーの製品開発にフィードバックされている。同じ自動化であっても荷主企業と物流企業では認識面に相当のギャップがあると言わざるを得ない」と歴史的背景を踏まえたシビアな見方を示す。
こうした指摘に対して大手物流企業の幹部は「荷主企業との認識ギャップや温度差は感じている。長らく人手依存だった業界だけに今は自動化投資による短期的・即効的なメリットを求めるのではなく、使いながら最適な導入計画と運用方法を検証していくことが先決」と述べ、実機を用いてトライ・アンド・エラーを繰り返すことが今後の糧になると展望する。
人手不足に加えてパートタイムや派遣社員の時給が上昇し続ける中、労働集約型産業の物流業界でもロボットやAI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)などといった革新的技術の早期導入を唱える声は多い。既存の機械・ロボットメーカーやシステムベンダーに加えて、最近では物流業界をターゲットとしたベンチャー企業やスタートアップ企業も登場している。
前出の大手物流企業関係者は「いずれ現場作業はロボットなどに頼る時が来る。今はその準備としてコストを払ってでも使い方を学ぶ期間と捉えている。荷主企業の物流に関する効率化要求は年々強まっているだけに、より早く自動化の運用ノウハウを身に付けて差別化を図りたい」と言及。自動化投資は目先の導入効果や技術論・方法論ありきではなく、中長期的な視点に基づいた知見の蓄積と体制づくりが大前提となることを示唆している。
(鳥羽俊一)