実証実験でスキャン時間が3分の1に短縮、積み込み場所も視覚で確認可能に
バーコードなどの高速・高精度読み取り技術を手掛けるスイスのスタートアップ企業Scandit(スキャンディット)の日本法人は11月5日、ヤマト運輸がEC事業者向けに提供している配送サービス「EAZY(イージー)」を担う協力運送事業者「EAZY CREW」が使うBYOD型(個人所有)スマートフォンの業務アプリに、スキャンディットのAR(拡張現実)技術を採用したと発表した。
現在、EAZYはZOZOTOWN、Yahoo!ショッピング、PayPayモールなどが利用。約1万6000人超の「EAZY CREW」が配達業務を担当している。
従来、ラストワンマイルにおけるトラックへの荷物積み込み業務はドライバーが伝票に印字された住所情報を基に、経験と勘を頼りに集配ルートを考え荷物の積み込みを行うなど、暗黙知に頼る部分が多かった。
ヤマトはスキャンディットの協力を得て、伝票をスキャンするだけで配達順序に合わせた車両への荷物の積み込み順や置くべき位置を、視覚的にナビゲーションできるようにする業務のデジタル化を図ることにした。
ヤマトは昨年6月、スキャンディット以外の製品も含めた実証実験を行った。その結果、スキャンディットのスキャン技術はソフトウエア開発キット(SDK)として提供されるためハードウエアの種類を問わず、専用端末と同等の高速かつ高精度なスキャン性能を発揮できる点や、ARや複数バーコードを同時に読み取る機能(MatrixScan)を備えている点を評価、導入を決めた。
実証実験の結果、スキャンディットのスキャン技術を活用することで、ヤマト運輸はこれまで要していた伝票情報の読み取り時間を約3分の1まで短縮できる見通しとなった。また、スキャンディットのAR機能を生かし、EAZYCREWは荷物にスマートフォンをかざすだけで、どの荷物をトラックの荷台のどの位置に積むべきかを視覚的に把握できる見込み。
さらに、正確性の面ではバーコードの誤読も解消されラストワンマイルの効率化と安全な運行を両立するドライバーにとって効率的な環境を提供できる見込みとなったことも、採用につながった。
両社は今後、スキャンディットの技術を積み込み業務に加えて仕分けや配達の業務にも展開するほか、複数の荷物(バーコード)を一括で認識するMatrixScan機能の活用を目指す。荷物の届け先など個人情報を非表示化とするため、配送伝票のQRコード化促進も検討する。
アプリ画面のイメージ(スキャンディット提供)
(藤原秀行)