主機関の運転効率化、電力供給も可能に
日本郵船とグループ企業のMTIは12月2日、米国船級協会(ABS)、船舶用主機関設計を手掛けるウインターツールガスアンドディーゼル(WinGD)とともに、船舶の温室効果ガス(GHG)排出量の削減効果最大化を目指し、船舶用主機関のバッテリーハイブリッドシステムを活用して船舶設計を最適化する共同研究を開始したと発表した。
船舶は荒天時などに強い波や風の影響を受けながらも航行速度を維持するため、主機関の回転数を大きく上げることがある。このように機関の回転数が大きく変動する際、機関に負荷が掛かる現象「負荷変動」が起きる。また、船舶のプロペラシャフトには軸発電機が接続され、主機関の回転数に応じた電力を発生させて船内に電力を供給している。
バッテリーハイブリッドシステムは、主機関が負荷変動したときに、バッテリーから船内に電力を供給することで軸発電機の負荷を軽くし、船が推進に使える力を増やすことができる上、効率的な主機関の運転が可能となる仕組みで、外航船舶での導入が進んでいる。また、バッテリーハイブリッドシステムは発電機関の代わりに船内の機器運転用、生活用などの電力供給を行えるため、活用できればGHG排出量の削減にもつながる。
今回の共同研究は、バッテリーハイブリッドシステムによるGHG排出量の削減効果を最大化するため、日本郵船、MTI、ABS、WinGDの各社が持つモデル化技術を結集して船舶の統合シミュレーションモデルを作ることを目指す。
具体的には、日本郵船とMTIの持つ船舶の実海域性能、WinGDの持つバッテリーを含めた機関プラントのモデル化技術を組み合わせて船舶全体の統合モデルを作成。ABSが第三者の立場でGHG削減効果の評価についてアドバイスしながら、4者が連携しデジタル空間で船舶試設計を行う。
実海域の気象海象を想定したシナリオで運航シミュレーションを進め、明らかになった課題を反映してシミュレーションモデルを改善し、船舶設計の最適化を目指す。同共同研究は、設計段階から船舶のユーザーである日本郵船およびMTIと、船舶機器メーカーのWinGD、そして船舶の評価機関のABSがデジタルモデルを共有してシミュレーションを行い、連携して船を造り上げる。
今後、日本郵船とMTIは、ABS、WinGD、造船所と協力し、共同研究で得られたシミュレーションの結果と実際に竣工した船の実海域でのデータを照合してシミュレーションの精度を向上させ、日本郵船グループの新造船計画における中心的な技術としていく。バッテリーハイブリッドシステムの運用・制御方法の最適化にもシミュレーションを活用する計画。同共同研究の開始はその第1歩となる。
(ロジビズ・オンライン編集部)