矢野経済研究所が予想、物流費上昇確実で対応迫られる業界
矢野経済研究所は12月9日、国内の屋外分野(輸配送)を対象とした、業務効率化やサービスレベル向上を可能にするTMS(配車管理システム)などの先進技術「物流テック」の市場動向調査結果を公表した。
2020年度に関しては、物流事業者の間で物流テックを導入する数が横ばいから微増傾向で推移していると指摘。「取引先顧客の業界により明暗が分かれる結果となった」と解説した。
今後については、トラックドライバーの長時間労働への規制が24年度に強化される「2024年問題」への早期対応策として導入を検討する物流事業者や荷主企業が増えていることを踏まえ、「24年に向けて市場は拡大していく見通しである」と展望した。
「荷主や元請け含めた運賃適正化が必至」
同社は物流業界のDX化をめぐる状況として、物流テックのサービス利用を踏まえ、「現在はまだ『デジタル化』を進めている段階」と説明。「物流DXを進めていく上では、業界を超えたオープンな情報共有の仕組み作りが必要である。その仕組みを構築していく主導者が、今後物流DXを進めていく立役者になると考える」との見解を示した。
2024年問題を前に、物流事業者の間で効率的な配車や実車率を向上させるTMSに加え、現行業務の可視化やリアルタイムの位置情報を把握できる動態管理システム、荷物と車両をマッチングするサービス、安全管理システムなどに注目が集まっていると解説。
併せて、働き方改革でドライバーの時間外労働規制が厳しくなると残業ができなくなり、1人当たり手取りで5万~10万円程度が減少するとの見方が物流業界関係者から出ていることを紹介。減収分を補うためにも人件費がさらに高騰することが考えられ、「24年までに物流費が挙がってくることは間違いないと言える」との持論を展開した。
慢性的なドライバー不足や長時間労働の実態を鑑みると、「時間外労働の上限規制を守りながら、これまでと同水準の輸配送サービスを提供することは難しい」と予想。物流事業者だけでなく荷主企業や運送の元請けとなる物流事業者も含めて運賃の適正化を図る取り組みが必至になるとみている。
(藤原秀行)