【独自】神戸エリアで先進物流施設の開発広がる

【独自】神戸エリアで先進物流施設の開発広がる

新名神道開通が追い風、「ストックは関西圏全体の2割に拡大」予想も

首都圏と同様、大阪を中心とする関西圏でも先進的な機能を備える賃貸物流施設の需要が旺盛だ。巨大な消費地を域内に抱え、eコマースの利用も伸びていることなどが背景にある。

その中でも近年は神戸エリアの存在感が高まっている。新名神高速道路の開通など高速道路網が発達して西日本広域をカバーできる地の利の良さが強みだ。この10年で物流施設のストックは加速的に増大しており、2022年以降も開発プロジェクトが見込まれている。

現状では神戸エリアのハイペースな供給に対し、需要も追い付いているが、デベロッパーにとっては開発用地の価格上昇や建築資材高騰といった懸念材料が根強い上、新型コロナウイルス禍が景気に与えるネガティブな影響も気がかりなだけに、神戸エリアが物流適地として今後も真価を発揮し続けられるかどうか、引き続き目を離せない。

IC近くの産業団地で建設相次ぐ

神戸市西区に位置する「神戸テクノ・ロジスティックパーク(神戸複合産業団地)」。計画面積は甲子園球場約70個分に相当する270ヘクタールで、製造業や物流事業者に広く門戸を開いており、既に多くの企業が進出済みだ。山陽自動車道の神戸西ICが近く、大阪や京都などへのアクセスに優れている点が評価されている。

敷地内では近年、賃貸物流施設が相次ぎ登場、フル稼働している。プロロジスはマルチテナント型とBTS型で竣工済みと開発中のものを合わせて計5棟のプロジェクトを展開。今年3月に完成した「プロロジスパーク神戸5」は三菱食品や三井物産グローバルロジスティクスが契約済みで満床が確定。今年4月に着工した「プロロジスパーク神戸3」も、2022年6月の竣工を前に半分程度のフロアが埋まっている。

近隣では日本GLP、メープルツリーインベストメンツジャパン、シーアールイー(CRE)、ラサール不動産投資顧問なども物流施設を提供。いずれもリーシングは好調のようだ。


神戸テクノ・ロジスティックパークに広がる物流施設群。手前から日本GLP、メープルツリー、プロロジスがそれぞれ開発


今年3月に竣工した「プロロジスパーク神戸5」。左隣は同じくプロロジスが開発し、新開トランスポートシステムズが専用施設として使っている「プロロジスパーク神戸4」


ラサール不動産投資顧問の物流施設

神戸テクノ・ロジスティックパーク以外でも、須磨区の産業団地「神戸流通センター」内でジーエルアール(GLR)インベストメントがゴールドマン・サックスと共同で今年6月、1.9万平方メートルの物流施設の工事をスタート。完成は2022年6月末を見込む。

神戸流通センターは計画面積が113ヘクタール。神戸淡路神戸淡路鳴門自動車道の布施畑JCT・ICが敷地内にあることなどから、メーカーや物流企業、卸・小売業など幅広い業界から進出済みだ。

三菱商事都市開発も神戸テクノ・ロジスティックパークと神戸流通センターの両方で開発用地を取得し、プロジェクトを進行中。東京センチュリーや神戸製鋼所、中央日本土地建物が株主を務める神鋼不動産も、物流施設開発への新規参入案件の第2弾として、神戸流通センター内で1万平方メートルの案件を建設することを決めた。

神戸エリアが物流適地として注目度が高まっている背景には、新名神高速道路の開通がある。既存の名神高速道路や中国自動車道と並行する形で、大阪・高槻~神戸間のルートが18年3月に全て開通。物流施設開発の余地が内陸部側に広がった。そこに神戸市が物流施設開発の受け皿となる大規模産業団地の整備に注力していたことが相まって、需要を引き付けているようだ。

県内で開発エリア拡大の兆し

JLL(ジョーンズ ラング ラサール)が今年12月に公表したリポートによると、神戸エリアでの賃貸物流施設のストックは5万坪以下だった2010年から、20年は15万坪余りまで拡大。25年には45万坪まで伸びると見込む。2012年までは大阪湾岸エリアのみだったが、13年以降は内陸部で急速に開発が広がっている。関西圏全体のストックに占める割合も直近の9%(21年7~9月期)から25年には20%まで達するとみている。

JLLはこれまでの開発案件について「ハイペースで供給が行われたが、旺盛な需要によって大半の施設がフル稼働しており、需給の逼迫が続いている」と指摘。「今後、神戸エリアの存在感はさらに高まっていくだろう」との見方を示している。

ただ、神戸の内陸エリアは六甲山などが広がり、平地が豊富とは言えないのが特徴。ある総合物流不動産会社の幹部は「国際港が近くて大阪や京都へのアクセスが良好なのが魅力だが、後背地が狭いのは物流施設開発の上で弱点になる。開発用地も今後はより広域で探していく必要がある」と話す。物流適地の地位を維持する上では、行政による新たな産業団地の開発などが不可欠になりそうだ。

関係者の言葉に呼応するかのように、兵庫県内で物流施設の開発エリアが広がる兆しがみられる。プロロジスは兵庫県猪名川町の山間部を切り開き、大規模なマルチテナント型物流施設2棟を開発するプロジェクトを展開。2棟の総延べ床面積は約38万平方メートルと、同社の案件としては国内過去最大級だが、賃貸面積の9割程度でテナント企業が確定している。新名神の川西ICから約2キロメートルで、大阪や神戸、京都へのアクセスも強みがある。

大和ハウス工業は神戸から車で1時間程度内陸に進んだ小野市の産業団地で、約2万平方メートルのマルチテナント型物流施設「DPL兵庫小野」を開発する。別の大手デベロッパー関係者は「地方自治体の間でも雇用創出効果などを見込んで物流施設を誘致する動きが強まっている」と物流適地の広がりに期待する。

EC大手の幹部も「自社で物流施設の開発用地を探す手間を考えれば、優良な賃貸物流施設を利用するという選択肢は今後も有力だ」と解説する。今後は関西圏の中でも「神戸エリア」にとどまらず、「兵庫エリア」の関心が高まっていきそうだ。

(藤原秀行)

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