強硬プーチン、サプライチェーンの攪乱要因に

強硬プーチン、サプライチェーンの攪乱要因に

ウクライナ侵攻で原油価格上昇し軽油や電気代に波及必至、世界経済の成長減速も

ロシアのプーチン大統領がウクライナへの侵攻に踏み切った。まさにその軍事行動を回避させるため、国連の安全保障理事会が緊急理事会を開催しているさなかに一報が伝えられた。国際社会の懸念をあざ笑うかのようなプーチン大統領の暴挙を前に、欧米諸国の間では外交努力や経済制裁の警告にもかかわらず最悪の事態を防げなかったことに失望が深まっている。

ウクライナ問題でプーチン大統領の強硬姿勢が続く限り、新型コロナウイルスの感染拡大から立ち直ろうとしていた世界経済にとって重しとなるのが避けられそうになく、無視できない暗雲が立ち込めてきた。既に欧米諸国の対ロ経済制裁の発動とロシアの対抗措置実施による影響を見込んだ動きが広がっている。有事に突入した今、物流業界も経済情勢悪化などを織り込んだ対応を急ぐ必要性が一層高まっている。

自動車の供給網混乱の懸念

2月24日は原油の国際市場で価格が急騰、約7年ぶりに1バレル=100ドルの大台を突破した。欧米諸国とロシアの対立激化でロシアからの原油供給が滞るとの思惑が背景にある。実際にそうした事態になれば価格が高止まりし、日本でもガソリンや軽油の価格がさらに上昇する懸念をぬぐえない。

さらに、ロシアからの天然ガス供給に多くを依存している欧州で、天然ガスの価格が上昇。その影響は同じく天然ガスの消費量が伸びているアジアにも波及しており、スポットの価格が過去最高水準に到達している。発電には石油や天然ガスを用いているため、こうした状況が続けば必然的に電気料金の押し上げ圧力となり、企業の経営にとっては大きなマイナス要因だ。脱炭素の世界的な号令で、天然ガスの需要がグローバル規模で膨らんでいる中での侵攻は、環境保護の動きに冷や水を浴びせ掛けた。


天然ガスの供給に影響は出るのか

ウクライナ侵攻がグローバル規模でサプライチェーンを攪乱する要因になる恐れもある。前述の天然ガスも調達先の変更などで海運会社をはじめとする物流企業が影響を受ける可能性が大きい。さらに、ロシアはハイテク産業などに不可欠な希少金属(レアメタル)の主要な供給元でもあり、例えば自動車の排ガスを浄化する触媒や電子部品などに使われているパラジウムはロシア産が世界の約4割を占める。ロシアが供給をストップすれば、世界の自動車など産業製品の供給網が大きく混乱しかねない。

パラジウムなどのレアメタルはロシアにとっても大きな稼ぎ手だけに、容易には供給停止に踏み切らないとの観測がエネルギー業界の関係者らからは出ているが、ウクライナ侵攻という常識外の手に出た強硬プーチンの行動は読み切れない。

ロシアやウクライナは世界有数の穀倉地帯だけに、小麦などの調達にも影を落とす。原油価格高騰などで物流や電気といったコストが跳ね上がれば、世界的なインフレ傾向に拍車がかかることも予想される。グローバル経済の減速による国内外の荷動きの不振という、物流業界にとっては非常に頭の痛い状況に陥るかもしれない。荷主企業と物流事業者が連携し、業務効率化や人手不足解消を進めて難局に立ち向かうことが、強く求められている。

(藤原秀行)

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