書店納品までのリードタイム短縮など効果見込む
大日本印刷(DNP)は3月10日、製造・物流領域の改革の一環として、東京都北区の物流拠点「DNP書籍流通センター」(赤羽SRC)を、2021年から業務提携しているトーハンが埼玉県桶川市で構えている物流拠点「トーハン桶川センター」内へ移設し「桶川書籍流通センター」(桶川SRC)に改編すると発表した。
トーハン桶川センターにDNPの書籍流通センターを移すことで、注文を受けてから書店に納品するまでのリードタイムを短縮できるといった効果を見込む。
DNP赤羽SRC
トーハン桶川センター
赤羽SRCは、DNPと丸善ジュンク堂書店が共同で整備し、DNPグループの書店を対象に運用している在庫流通拠点。店頭在庫補充機能と通販対応機能を持ち、最短で受注翌日の出荷を実現。流通リードタイム短縮による販売機会の最大化を図っている。
移設先のトーハン桶川センターは延べ床面積が3966平方メートル。桶川SRCはその5階に入居する。2022年10月に稼働を始め、移設作業は23年1月に完了する予定。
※以下、プレスリリースより引用(一部、編集部で修正)
桶川SRCの特色と効果
桶川SRCは書店からの注文に対し、同センターが抱える在庫と、データを連携している出版社倉庫の在庫の中から迅速に出荷する。さらにPOD(プリント・オン・デマンド)製造による品切れのない出荷を行なう。「商品供給リードタイム」と「出荷可能なラインナップ」の両面から可能な限りマーケットの需要に応え、読者が読みたい本を読みたい時に入手できる環境を整備する。
現在両社で、赤羽SRC未利用の書店店舗の注文データを共有・分析し、赤羽SRCの時系列在庫データに引き当てて試算したところ、注文から書店納品までのリードタイムの改善やPOD製造での商品供給で課題解決につながる効果が以下の通り見られ、データを共有した対象書店からも評価を得られた。
効果① 市場ニーズに沿った在庫メンテナンスを行い、最短で受注翌日に書店へ納品
書店注文の30%相当が翌日納品可能であり、出版社倉庫からの取り寄せも含む全ての注文品の平均リードタイムが、2日間短縮できるという結果を得た。こうした結果も踏まえて、桶川SRCは連携書店の拡大を進める。現在赤羽SRCで連携しているDNPグループの書店および、連携を予定していたトーハングループ書店と三省堂書店に加え、今回新たに未来屋書店の実証実験への参画が決定している。両社は引き続き、広く書店の参画を呼び掛ける。
効果②:出版社在庫のデータ連携により、取り寄せ品も1週間以内に書店へ納品可能
現状、生活者からの注文の約30%が出版社在庫からの出荷となっており、桶川SRCは出版社在庫とのデータ連携を行うことで、書店店頭で出版社の在庫状況も確認できるため、読者は利便性・安心感を実感できる。桶川SRCでは出版社との在庫データ連携をより拡大。現時点で、連携出版社は赤羽SRCでの14社から22社に増加しており、引き続き連携出版社の拡大を図る。
効果③:在庫がない注文に対し、PODで確実に書店へ納品可能
生活者からの注文のうち約15%はSRC・取次・出版社に在庫がなく、短期での調達が困難となっている。これに対し、桶川SRCはDNP書籍製造一貫工場と連携し、PODによる短納期・小ロット生産で“新刊・売れ筋商品の欠品”と“品切れ重版未定”の根絶を目指す。
<上記グラフについて>
・ 今回行った赤羽SRC未利用書店の店舗在庫のシミュレーションを可視化したもの。発注から書店納品までのリードタイム及びそのボリュームを検証しました。
・ 上段:現状 / 下段:SRC連携想定時
・ 横軸:発注から納品までのリードタイム ※「15+」は、納品まで15日以上経過したもの(不着含む) / 縦軸:各納品日の注文に対するボリューム
今後の展開
両社は、「商流改革」の一環で、読者ニーズを起点とした共同仕入れの取り組みとして「マーケットイン型販売体制」の確立を目指している。
トーハングループ書店(ブックファースト・八重洲ブックセンター等)が複数出版社と取り組んできたマーケットイン型販売契約の実証実験を発展させ、DNPグループ書店(丸善ジュンク堂書店等)および、桶川SRCの新規参画書店である三省堂書店・未来屋書店との共同施策への拡大を目指し、新しい施策推進体制を構築すべく協議を開始している。
なお、トーハングループの先行実証実験では、対象出版社のPOS売上前年比101%、返品率14.9%ダウンの20.9%の実績を上げている。
今後、2022年10月の桶川SRCの稼働開始に向けて、現在稼働中の赤羽SRCにおいても、先行的に書店と倉庫や製造のデータ連携を進めていく。
(画像はDNP提供)
(ロジビズ・オンライン編集部)