給電ステーション完成し受け入れ態勢整う
川崎市と旭タンカー、東京電力エナジーパートナーは4月14日、世界初のEV(電動)タンカー「あさひ」が同日、川崎港に接岸したと発表した。3月に香川県丸亀市を出発していた。
3者は昨年9月、「川崎港における電気推進船の普及促進等に関する基本協定書」を締結。川崎港でEVタンカー用の給電ステーションを建設してきた。このほど完成し、EVタンカーの受け入れ態勢が整った。
「あさひ」(写真はいずれもプレスリリースより引用)
「あさひ」は全長62メートル、全幅10.3メートル、型深さ4.7メートル。総トン数は492トン。大容量リチウムイオン電池を動力源とし、CO2やNOX(窒素酸化物)、SOX(硫黄酸化物)、煤煙などをほぼ出さず、環境負荷を低減できるのが特徴。騒音や振動も抑えられるため、乗組員の労働環境や港湾周辺環境の改善にもつながると見込まれている。
EV船開発を手掛けるe5ラボが企画し、興亜産業(香川県丸亀市)が建造。主に船用燃料供給船として東京湾内に就航する。4月下旬に商用運航を始める見通し。
川崎港の夜光けい留さん橋に設置した給電ステーションは、EVタンカーへ電気を供給し、搭載されている大容量リチウムイオン電池の蓄電を行う。EVタンカーに供給する電気は実質100%再生可能エネルギー由来の電気で、年間約400トンのCO2を削減できる計算。一般家庭約300世帯分の年間消費電力量に相当する。
災害時には非常用電源として陸上に電気を供給することもできる。BCP対策として注目される。2023年3月には2隻目が竣工する予定。
3者は今後もゼロエミッション電気推進船の普及を通じた新しい海運インフラサービスの構築と、環境への負荷の少ない持続可能な循環型社会の実現に向けた先導的な事業として、EVタンカーの運航に関する事業を協力して推進する方針。
給電ステーション完成と接岸の記念式典で撮影に応じる(左から)e5ラボ・一田朋聡社長、公益社団法人川崎港振興協会・齋藤文夫会長、旭タンカー・中井和則社長、川崎市・福田紀彦市長、東京電力エナジーパートナー・秋本展秀社長、e5ラボ・末次康将最高技術責任者
(藤原秀行)