商船三井と三浦工業、航行中にマイクロプラスチックを常時回収可能な装置開発

商船三井と三浦工業、航行中にマイクロプラスチックを常時回収可能な装置開発

自動車船に試験搭載、広海域での海洋環境保全に貢献目指す

商船三井と三浦工業は7月5日、海洋汚染の原因となるマイクロプラスチックを航行中に常時回収可能な新型の遠心分離式MP回収装置を開発したと発表した。

6月から商船三井が運航する自動車船「EMERALD ACE(エメラルド エース)」に「本船」)に試験的に搭載している。

両社はマイクロプラスチック回収のため、これまで船舶のバラスト水処理装置を構成する逆洗機能付きフィルタに捕集されたマイクロプラスチックの捕捉を荷揚げ時に行う回収装置を開発。バルクキャリア3隻、木材チップ船2隻の計5隻に搭載してきた。

各搭載船では荷揚げ地の港で計約1万6000立方メートル相当の海水を処理してきた。処理の時間とエリア、容量をさらに拡大するため、新型回収装置の開発に踏み切った。

新たに遠心分離装置を設けることで、配管を閉鎖することなく、海水からマイクロプラスチックなどの浮遊物濃度の高い濃縮水を分離し、効率よく浮遊物を捕捉できるようにする。常時取水している海水ラインの処理や、従来型は一部の処理にとどまっていたバラスト水処理装置内の逆洗機能フィルタの船外排水も全量処理が可能になると見込む。

同船は常時海水を取水している冷却海水ラインにつなげることで、航行中は常にマイクロプラスチックを回収することが可能になり、従来機と比較し年間約70倍の海水を処理できると見込む。自動車船の投入航路は全世界に及ぶため、航行中に装置を稼働することであらゆる海域をきれいにし、海洋環境保全に貢献することを目指す。


遠心分離式MP回収装置の配管の概略図


商船三井が運航する自動車船「EMERALD ACE」の投入航路実績(いずれもプレスリリースより引用)

昨今、海中のマイクロプラスチック浮遊量データが、マイクロプラスチックの動静調査や、各分野で実施されているマイクロプラスチック削減活動の効果測定に活用できるという背景から、同データの需要が研究機関の間で高まってる。商船三井は本装置が回収したマイクロプラスチックの成分・量・場所・時期といったデータを研究分野に活用することも視野に入れている。

三浦工業はさらに大容量の処理が可能な商品とバラスト水処理装置、マイクロプラスチック回収装置を組み合わせたバラスト排水全量処理や海水冷却系統の全量処理システムの開発を進めす方針。

(藤原秀行)

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