【独自】コンテナ1本の荷降ろし、作業自動化で2時間以内に完了目指す

【独自】コンテナ1本の荷降ろし、作業自動化で2時間以内に完了目指す

川崎重工、物流領域向けロボット開発に注力

川崎重工業が、物流領域向けのロボット開発に注力している。同社はグループで2030年にあるべき姿を掲げた「グループビジョン2030」の中で、ロボットなどの先進技術を駆使して人手不足に直面している物流の変革を後押しする考えを示している。

その一環として、輸入コンテナからの荷降ろし(デバンニング)などの自動化を支援し、人手不足に悩む物流業界を支援していきたい考えだ。現状はコンテナ1本当たりの荷降ろしを作業自動化で2時間以内に完了できるようにすることを目指している。

自走式で既存センターに導入容易

川崎重工は今年3月、人間に代わり荷物をデバンニングできるロボット「Vambo(バンボ)」を発売した。コンテナ内に混載されている様々な大きさのケースを自動で荷降ろしするケースを想定。同社製の中型汎用ロボットと中西金属工業製のAGV(無人搬送ロボット)を組み合わせ、川崎重工が開発した高速・高精度の3次元ビジョンシステムとAIを連動させてケースの大きさや傾き、ずれなどを自動的に認識、吸着ハンドでケースをつかんで取り降ろす。

一般的にコンテナの中には1000個以上のケースが積まれていることも多く、機械化が遅れており、人力頼りで現場スタッフの負荷が大きい。川崎重工は荷降ろしの部分を自動化することで、物流現場の生産性向上と負荷軽減に大きく貢献できると意欲を見せている。


Vambo(川崎重工業提供)

VamboはAGVがコンテナ内まで進入した後は、電源ケーブルを接続し、有線の状態で作業を続ける。ケース当たり30キログラムまで搬送が可能で、一度にケース2個を荷降ろしするのが基本。人手を借りずに1時間に最大600個を処理できるという。コンテナ内の限られた空間の中でもハンドをコンテナの内壁にぶつけず、円滑に作業を進められるよう設計している。自走式のため、既存の物流拠点を大きく改修せずに導入できるのも大きなメリットだ。

川崎重工 精密機械・ロボットカンパニー ロボットディビジョンの20bb7吉桑栄二(編集部注・「吉」は「土に口」)産機ロボット総括部長兼産機システム部長は「基本的には標準的なケースのサイズなどはAIが学習済みのため、円滑に現場へ導入できる。イレギュラーなサイズや形状のケースがあっても、一度学習させればすぐにロボットが対応可能。混載に対応できるという点が様々な方から非常に評価していただけている」と説明。製造業向けのロボットなどで培ってきた技術力を生かせると自信をのぞかせる。


Vamboによる荷降ろしのイメージ(川崎重工業提供)

日立物流と現場で実機検証

6月には日立物流と組み、同社が千葉県柏市に構えている物流拠点「柏プラットフォームセンター」でVamboの実機検証をスタートした。現場にVamboを投入し、作業フローが円滑かどうかや安全装置が正しく動作するかなどを確認、さらに性能を高めていくことを目指している。

吉桑部長は「当社のラボと実際の現場ではどうしてもケースの積み方などが異なってくるだけに、日立物流さんのご協力を得て、現場の実運用によりマッチしたものに仕上げていきたい」と狙いを説明する。既にVamboには物流企業などから引き合いが多数寄せられており、そうした期待に応えたいとの思いがある。

例えば、コンテナ内で荷崩れしていて、Vamboが安全確認のためいったん作業をストップした後、いかに現場のスタッフで円滑に作業を再開できるようにするかといった点で引き続き改良を進めていく構えだ。現状はまず、コンテナ1本の荷降ろしをVambo投入により2時間以内で確実に終えられるようにしていくことを目指している。日立物流の現場での経験もフィードバックしていく予定だ。

川崎重工は2030年にロボット事業全体で売上高4000億円を目標に掲げており、物流は新たな領域として期待する分野。吉桑部長は「まずデバンニングのロボットで当社の技術力を物流業界で広く認知していただけるようにしたい。カスタマイズのご要望にもお応えしていく」と強調。将来は自走式のパレタイズやでパレタイズといった分野にも注力していくことを視野に入れているようだ。

(藤原秀行)

テクノロジー/製品カテゴリの最新記事