交通弱者らへの買い物支援想定、オードブルやプリンなどを空から配達
セイノーホールディングス(HD)と出前館、エアロネクストは8月29日、同社子会社でドローン物流を手掛けるNEXT DELIVERYも参加し、8月26日に福井県敦賀市で、地域課題の解決に貢献する「新スマート物流」の構築に向け、交通弱者らへの買い物支援を想定したドローン配送の実証実験を行ったと発表した。
実験は、国の「デジタル田園都市国家構想推進交付金」を活用して実施した。
使用したドローンを前に、撮影に応じる(左から)セイノーHD事業推進部ラストワンマイル推進チーム・和田悟課長、NEXTDELIVERY・田路圭輔代表取締役、敦賀市・渕上隆信市長、出前館・森山海太シェアリングデリバリー本部長執行役員
敦賀湾上を飛行する物流専用ドローン「AirTruck」
荷物を搭載したドローンを見送るスタッフと地元の子供達(金ケ崎緑地ボードデッキ)
テイクアウト商品が入った箱をドローンまで徒歩でお届け(敦賀市レンガ倉庫前)
テイクアウト商品が入った箱をドローンにセット(金ケ崎緑地ボードデッキ)
ドローン配送されたテイクアウト商品をスタッフから受け取る地元住民の植本太郎氏(東浦公民館前)
敦賀市とセイノーHD、エアロネクストの3者は昨年11月、敦賀市が目指す水素・再生可能エネルギー・ゼロエミッション物流など脱炭素化の取り組みによる高齢化や過疎化などの地域課題解決に向けて包括連携協定を締結。次世代高度技術を駆使し、新しい物流のビジネスモデルの構築を図っている。
具体的には、セイノーHDとエアロネクストが開発・推進するドローン配送と陸上輸送を融合した新スマート物流「SkyHub(スカイハブ)」の社会実装に向けて実施。実際のドローン運航はNEXT DELIVERYが担い、システム面でSkyHubシステムと出前館アプリを連携させるなどの準備を進めながら、敦賀市における今秋の実装開始を図っている。
各者は今年1月、同市内の愛発地区で、敦賀市の地理的特徴を考慮した「市街地・過疎地連結型ドローン物流」の実証実験を実施しており、今回は第2弾となる。
敦賀市は総人口6万3839人(2022 年7月末現在)、面積は県内3番目の251.41平方キロメートルで、地理上は典型的な扇状地形。市街地が中央に位置し、放射状に山間地域が広がっている。今回実証実験をした東浦地区は敦賀湾に面し、風光明媚な地域だがアクセスが1本の道路しかない過疎地で、地域住民が市街地までの食品や日用品の買物、医療施設へ移動するにも時間がかかり、災害時には孤立集落になるリスクのある地域となっている。
実験では東浦地域に住む交通弱者らへの買い物支援や観光施設との連携を想定し、敦賀赤レンガ倉庫内のテイクアウト商品(敦賀赤レンガ倉庫内のレストラン、Sogno-Poli=ソニョーポリ=のオードブルと赤れんがcafé のデザート・ドリンク)を、金ヶ崎緑地から東浦公民館までドローンでオンデマンド配送した。
住民が出前館アプリで注文し、SkyHubシステムに配送通知が入ったことを想定して注文されたテイクアウト商品が、敦賀赤レンガ倉庫内の飲食店で調理され、出前館のスタッフによりドローン離陸場所の金ヶ崎緑地ボードデッキまで徒歩でデリバリーされてドローンにセット。東浦公民館に向けて片道約7.8キロメートルの距離を約16分、エアロネクストが開発した物流専用ドローン「AirTruck(エアトラック)」で飛行した。商品はこぼれたり崩れることなく、無事東浦公民館で待つ植本氏の手に届けられた。
本ドローン配送実証実験の流れ
実証実験に使用された日本発物流専用ドローン「AirTruck」
今回ドローン配送された商品(オードブル・プリン・アイスコーヒー)
本実証後、まず敦賀市愛発地区で今秋をめどに、SkyHubのサービス提供を開始したい考え。具体的には、各社の荷物などを集約・一時保管する拠点「ドローンデポ」と、愛発地区内にドローンの着陸地点となる複数の「ドローンスタンド」を設置し、地上配送と将来のドローン配送を想定した買い物代行などのサービス開始を準備している。
(藤原秀行)※写真はいずれもエアロネクスト提供