東邦薬品と連携、CO2排出抑制
シスメックスと東邦ホールディングス傘下の東邦薬品は9月8日、高度な冷凍輸送が必要となる生化学検査用の精度管理試料の供給に関し、輸送回数の低減と輸送資材のリユース、輸送工程全体のドライアイスフリーを実現したと発表した。
シスメックスは従来、冷凍保管が必要な製品を厳格な品質・温度管理下で顧客に届けるため、ドライアイスで保冷した上で、チャーターなどの専用便で輸送してきた。現在、年間約90トンのドライアイスを製品輸送に使っているが、ドライアイスは石油精製の過程で排出されるCO2などを原料としているため、環境配慮・安定的な調達・調達価格の高騰などの観点から代替策を検討してきた。
その一環として、2021年12月にヤマト運輸と連携し、遺伝子検査用試薬に関してマイナス70度超低温帯でのドライアイスフリー輸送を開始した。
東邦薬品は希少疾病用医薬品や高額医薬品といった、流通過程で特別な管理が求められる医薬品などを安定的に供給するため、最先端の物流機能と幅広い温度領域に対応した定温搬送装置「サルム」を組み合わせたサルム・ソリューション・システムを展開。サルムは温度・装置の状態が本体に内蔵された記録装置に記録するため、医薬品の品質が完全に担保されていることを証明できるのが特徴。
定温搬送装置「サルムFZ」
製品の返品・再販売が可能となり、高額なスペシャリティ医薬品などの廃棄リスクを大幅に低減できると見込む。定温管理用の保冷剤・ドライアイスとは異なり、運用時のCO2排出量が少ないのもメリット。
シスメックスと東邦薬品は、サステナビリティ・環境配慮の観点から、精度管理試料のドライアイスフリー輸送の実現に向けた体制を確立。9月から運用を開始する。まず東京からスタートし、順次対象エリアを拡大する予定。混載輸送と医薬品卸会社による通常商品の配送体制を組み合わせて顧客に届ける長時間・長距離でのドライアイスフリー輸送は日本国内の診断薬業界で初めてという。
シスメックスの検査関連試薬の在庫をより顧客にアクセスしやすい東邦薬品で確保することで、災害などの緊急時も医療従事者が安心して医療活動を行えるようにし、製品の安定供給を図る。
ドライアイスフリーの概要(いずれもプレスリリースより引用)
(藤原秀行)