製造機械の不調復旧も迅速化、取引先からの信頼向上
工場や店舗などの現場作業効率化とペーパーレス化をノーコードで実現できるソフトウエア「カミナシ」を手掛けるスタートアップのカミナシは11月21日、干物などを手掛ける水産加工会社の紀州高下水産(和歌山市)が「カミナシ」を採用したと発表した。
紀州高下水産は主にあじ、さば、さんま、のどぐろなどの干物を製造・販売している。飲食店・スーパーなどの小売店への卸売だけでなく、ECサイトでの直販も行っており、過去にはメディアで特集されるなど、ECサイトの口コミでも高い評価を得ている。同社は小規模事業者向けの「HACCP(危険度分析による衛生管理)の考え方を取り入れた衛生管理」に対応する際の管理工数増大が懸念されたため、業務効率化に向けカミナシの導入を決めた。
紀州高下水産はこれまで冷蔵庫・冷凍庫の温度管理や従業員の入室記録、機械の点検表を紙やホワイトボードで管理しており、バイヤーなどからの問い合わせを受けて、過去の作業記録を確認するのに2日ほど要していた。さらに、当時の管理方法のままHACCP対応を進めた際の、記録・管理の煩雑化・業務工数の増大が懸念されていた。
こうした運用を「カミナシ」に変更し、作業記録、承認、データの蓄積・閲覧などが一気通貫してできる衛生管理を実現。承認作業の時間を9割短縮し、過去の作業履歴がすぐに確認できるようになったことで、取引先のバイヤーなどから問い合わせがあった際もすぐに回答ができるようになり、取引先からの信頼向上につながったという。
また、製造機械の不調が発生した際、以前は従業員から管理者へ報告し、管理者から修理業者へ依頼する手順となっていたため復旧まで2日ほど掛かり、工場の生産力低下を引き起こしていた。
「カミナシ」導入後は不調の発生時に、その事実を「カミナシ」上に記録すると確認すべき箇所の表示や不調箇所をタブレットで撮影できるようにしたほか、修理業者への依頼方法も表示するよう変更。離れた場所にいる管理者への報告スピードが向上したほか、従業員から直接修理依頼ができるようになったことで、復旧までの時間が大幅に短縮。生産力の低下予防に大きく貢献した。
今後は衛生管理のデジタル化を皮切りに活用範囲を広げ、各作業工程の業務マニュアルの「カミナシ」への移行に着手する予定。新人教育の手間やコストを削減し、業務効率化を加速させたい考え。
(藤原秀行)※写真はカミナシ提供